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メディア(テレビや雑誌やWEB)に掲載されるのに、費用はかかるのか?ー記事広告と取材商法

この記事は2017年10月に公開し、ブログ開設以来、もっともアクセスが多かったものです。
当時は、取材商法というと雑誌、または雑誌とWEBメディアの抱き合わせでの勧誘が中心でした。

ところが新型コロナウイルスの感染拡大で出版社は大打撃を受け、雑誌ビジネスは危機的状況が続いています。とくに広告が運営の生命線となっている雑誌ほど影響が深刻です。

そのせいか、最近は雑誌の取材ではなく、WEBやテレビ出演を名目にしたケースが増えているようです。

メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、WEBなど)が変わっても、「取材商法」や「記事広告」について判断するポイントは変わりません。
また、この3年、仕事で広報に深く関わっていたので、その分野の情報も加え、『雑誌に掲載されるのに、掲載費や取材費はかかるのか?ー記事広告と取材商法』を改題し、2021年5月時点の改訂版として再公開します。


パターンは2つある

とにかくそれは1本の電話、あるいはメールから始まります。
どこから、誰からの連絡であっても、パターンはほぼ2つにわかれます。

A  有名な出版社・テレビ局などから委託を受けている代理店や編集プロダクション、PR会社だと名乗る。
  雑誌の特集や番組で、あなたを紹介したいと言う。

B  ホームページやブログなどであなたを知った、メディア会社だと名乗る。
  (社名も誌名も番組名もあなたは知らない)
  有名人にあなたを取材させたいと言う。

こんな連絡があったら、個人事業主やフリーランスなら舞い上がっちゃいますよね。ついに活動を認められたのか、って。

そんなふうに喜んでいいのは「A」の場合だけです。ただし、「A」でも喜べないパターンがあります。
それは後述するとして、「A」でも「B」でも、こうした連絡があったらまず最初に尋ねてほしいことがあります。

あなた「その取材に費用はかかりますか

先方が「いえ、かかりません」と答えたら、おめでとうございます。それは「A」の、喜んでいいパターンです。
結論からいうと、出版社やテレビ局などから取材の依頼があった場合、通常お金はかかりません。
なのに取材費や掲載料を提示されたら、2つのことが考えられます。

ひとつは「A. 記事広告」の掲載依頼
そして「B. 取材商法」です。


A. 記事広告とは

じつは、お金を払って雑誌に載せてもらうことは、ふつうにあります
そう、広告ですね。

通常お金がかからないはずの取材に費用がかかるとしたら、それは取材、編集記事という形式を借りた宣伝広告のひとつ、「記事広告(記事広)」です。

ちなみに、誰が見ても広告とわかる広告は「純広告(純広)」といいます。


お手元に雑誌があれば、ページをめくってみてください。
タイトルの横、またはページの四隅のどこか、あるいは記事の文章の最後のあたりに、ごく小さく「広告」、もしくは「PR」、「AD」「協力:○○(企業名)」などと入っているページはありませんか。

もしあれば、それが記事広告です。これらは一見、ふつうの記事のように見えます。
こうした形式をとるのは、ズバリ広告だとセールス臭がするのに対し、記事のようなスタイルだと第三者的な印象で、情報に信頼性を与えられるからです。


商業誌は基本的に広告で成り立っています。
ここに女性誌(月刊)がありますが、全266ページ中、45ページが純広告。
記事広告とはっきりわかるものは11ページありました。
なぜわかるかというと、タイトルが目次に掲載されていないからです。

つまり266ページ中、広告は56ページ。
本誌の4/1近くが広告で占められているわけです。
さらに8ページの別冊付録が1冊丸ごと企業とのタイアップ。

形式はどうあれ、広告であれば出版社側に掲載料(広告料)が入ります。
出版社の広告収入は減少傾向なので、記事広告は雑誌の生命線なのです。

ちなみに、女性誌の純広告の広告料(表紙まわりを除く)は1ページ(カラー)で150万〜200万円くらいが相場です。
これはあくまで雑誌に掲載するためだけの費用なので、広告主である企業がわたしたち制作会社に支払う制作料(デザイン、撮影、取材、コピーライティングなど)やタレント、モデルを使う場合の出演料は別途発生します。

企業の広告料がいかに莫大か、推して知るべし、でしょう。


個人事業主やフリーランスに記事広告の営業がある場合、たいてい『全国(または地域)で人気の(〇〇店舗、教室、サロンなど)特集』といったプロモーション企画であることが多く、中小企業や個人など複数の広告主が共同出稿するものです。その場合、掲載費+制作料で費用が提示されるはずです。

制作会社に勤めていた頃、わたしは純広告も記事広告も担当したことがあります。
記事広告そのものは、昔からある広告手法のひとつです。


記事広告の作られ方

では、記事広告はどうやって作られているのでしょうか。
ここでは、作り手の視点から記事広告の制作現場についてお話しします。
仕組みを知れば、記事広告それ自体は「うさんくさい」わけではないとわかっていただけるでしょう。
いつか記事広告を出そうか迷うことがあったら、このコラムを思い出してください。
関心ない方は、このコラムはとばしてくださいね。


制作会社(広告制作プロダクション、PR会社、編集プロダクションなど)への記事広告の制作依頼は、おもに2つのルートがあります。
ひとつは広告主であるクライアント企業の宣伝部や企画部などから。
もうひとつは出版社から委託されている広告代理店からです。ここがあなたに「雑誌に掲載しませんか」と連絡してきた代理店です。

どちらの場合でも、打ち合わせにはクライアント企業の担当者が参加します。代理店経由の場合は、そこに代理店の営業担当者や制作ディレクターが同席します。違いといえばそれだけです。

最初の打ち合わせ(オリエンテーション、オリエンともいう)で、クライアントの意向を聞き、資料などを受け取り、方向性を確認します。

次の打ち合わせはプレゼンになります。
記事広告ページのデザイン案やキャッチフレーズ案を2、3パターン提出して、どの案にするかを決めます。

ここで提出するデザイン見本のことをデザインカンプとか単にカンプといいます。
できあがり見本といってよいもので、一般の人なら実物とは区別できないと思います。よく見ると、記事本文がダミーの文章だったりするんですけど。

これで撮影する写真のイメージや取材の文章量、キャッチフレーズや見出しがクライアントの意図に沿っているかを確認し、OKが出たら、カンプに従って取材、撮影が始まります。

取材は、雑誌の編集部が広告主であるクライアント企業を取材している立場で制作します。
あなたがもし、記事広告に掲載されるとして取材を受ける場合、インタビュアーとして直接対面するのは、おおむねわたしたち制作会社のスタッフです。

できあがったものは「取材記事」ではあるけれど、ジャーナリズムではありません。書き方こそ第三者ですが、目線は広告主です。だって、広告ですから。

取材原稿のテキスト、写真、そのほか必要な画像データなどをデザインデータとしてとりまとめ、代理店やクライアントの担当者にチェックを受け(校正作業)、何度かの修正作業を経て、印刷用の入稿データを印刷所(または代理店や出版社)に送って完了です。

どんな仕事でもそうですが、順番として後ろの人ほど時間に追われることになります。
コピーライターやライターよりデザイナー、デザイナーより校正マン、校正マンよりプリントディレクター…。
クリエイターは、つくる作業をしているときはハッピーですが、雑誌の発売日などは動かせないので、締め切りが重なると修羅場です…。

なので、みんな入稿明けのビールがいちばん美味いとよく言います(笑)。


B. 取材商法とは

記事広告は、広告主から出版社などメディア側に制作依頼することもあれば、メディア側から広告主に掲載依頼することもあります。
あれれ? 後者と取材商法を混同しそうですが、明らかに違います。
わたしにかかってきた電話を例にあげて説明しましょう。


記事広告の営業電話やメールは、前述のように広告代理店や系列の編集プロダクション経由です。
社名を知らなくても、雑誌や出版社名は誰でも知っているところです。

取材商法だと、掲載される雑誌やWEB媒体も、連絡してきた会社もマイナーです。
ただし、「取材者に著名人を使う」のが大きな特徴。
「タレントや元スポーツ選手の○○さんを行かせます、ついては肖像権や取材費として費用が発生します」というものです。

また日程も先方の指定。
取材枠に限りがあり、すぐ返事しなければここで話は終了です。

わたしの場合、元スポーツ(格闘技)選手で費用は8万円、掲載スペースはA4 1/2でした。
最近の相場だと5万円〜が多いようですが、もっと高額のケースもあるようです。

雑誌広告の掲載料を知っていると、この価格は桁違いです。
取材記事は自分のHPに載せたり、チラシなどに転用するのもOK。
掲載するWEBメディアに自社へのリンクもしてくれます。
サインももらえますよ、とのことでした(いらんけど)。

そう、雑誌に掲載されるというより、そのタレントのファンだったり、有名人に取材されたことをネタに楽しめる人なら、それも経験なのかもしれません。

問題は「取材」と言いながら、こちらから問いただすまで費用が発生するのを言わなかったこと。
この手の連絡があった場合、最初に費用を尋ねましょうと書いたのは、時間の無駄をなくすためです。

 

どう判断するか

わたしはもともと広告屋なので、広告には肯定的です。
事業を拡大するためには広告費は必須だからです。

自戒をこめて書きますが、主催者のフォローが薄い高額セミナーや高額塾に参加するくらいなら、その半額くらいの広告費をかけたほうが集客できるかもしれません。

ただし、一度や二度、雑誌やWEBに掲載されただけでは必ずしも集客にはつながりません。
無名の雑誌やサイトならなおさらです。

その媒体が「あなたの顧客層」に合っているか。
その媒体の影響力はどうか。
来てほしい顧客に刺さる記事になるか(記事広告はキホン発信者目線)。
掲載されたことをマメにアピールできるか。

…そこから費用対効果を考えてください。

起業初期や副業では、お金をかける余裕がないかもしれません。
でも、いつまでも無料にこだわるとビジネスの成長を妨げることにもなりかねません。

広告を掲載するなら、あなたのビジネスの成長度がどのくらいか。
広告に投資できる資金がどのくらいあるか。
広告を打って対応できないくらい反応があったらどうするか。
逆に広告を打って反応がなかった場合、どうするか。

といったことをしっかりシミュレーションして、よく考えてから判断してください。
ちなみにわたしの判断基準は以下のとおりです。

【記事広告】
はっきりと最初から「広告」出しませんかといわれたら、条件を聞いて返事します。
先方は営業ですから、こちらもビジネスとして判断します。

【取材商法】
やり方が自分のポリシーと合わないので断っています。
マスコミの仕事をしたことがあって、そもそも取材はお金がかからないことを伝えると、諦めて電話を切られます。

自営業者やフリーランスのよさは、自分のポリシーと合わないことは堂々と断れることです。

無名のメディアに取り上げられても、大きな影響力は期待できません。
また、取材商法もそれなりに知られるようになってきたので、なまじ取り上げられて「引っかかったのではないか」と疑われると、デメリットのほうが大きいことになります。

お金をかけずに雑誌に載る方法

誤解しないでほしいのですが、お金がかからない「取材」がよくて、「広告」がダメなのではありません。
「広告」をたくさん出している企業は、よく「取材」もされています。

相乗効果があるのです。
残念ながら、大きな企業と違い、個人事業主やフリーランスは黙っていたら取材されることはまずありません。
取材されるように働きかける必要があるのです。

起業初期で資金に余裕がなければ、新聞社、放送局や出版社などにニュースリリースを送ってアプローチします。

これなら掲載料はかかりません。

もちろん配信サービスを使えば費用はかかりますが、自分から記者クラブに持ち込んだり、メディアに送付すれば、交通費と通信費くらいですみます。

ただ気をつけていただきたいことが1点あります。
プレスリリースを配信すると、取材商法や記事広告の営業も増えることがあるのです。
配信直後から問い合わせのメールや電話がひっきりなしと思ったら、じつは営業電話だったというのは「プレスリリースあるある」だったりします。

取材商法にもサブスク型が登場

広告も取材も1回出ただけでは「いい思い出」でおしまいです。
また、取材商法がそこそこ知られるようになり、警戒感が強まってきたためか、新しいやり方が登場しています。それがサブスク型です。

これまでは1回取材して、数万円〜でした。
個人にはそれなりにまとまった金額ですが、1回あたりの費用を1万円程度に押さえ、半年なり、1年なり、毎月同額を支払うというもの。
いや、手を変え、品を変えってこのことですね…。


単発であろうと、サブスクであろうと、判断基準は変わりません。
ほんとうに信頼できるメディアに継続して取り上げられたり、広告出稿できるようになるには、中・長期的かつ戦略的に取り組む必要があります。

1回のチャンスにビジネスの命運を賭けるような、お金のかけ方はしないでください。
最近ではfacebookやtwitter、instagramなどSNSを活用した、低価格で出稿できる広告も増えているからです。

取材商法そのものは違法でも詐欺でもないとか。
個人事業主やフリーランスの虚栄心をくすぐるところを「ずるい」ともいえますが、自分にも営業電話がかかってきて、身分不相応な功名心がないか試されているような気もしました。

記事広告の営業電話や取材商法が後をたたないのは、一般的な個人事業主やフリーランスは「マスコミの実情を知らない」と思われているからです。
テレビや雑誌に出るのに「お金がかかる」と言われたら、知らない人は「そんなものかな」と納得するかもしれません。

広告を無碍に否定せず、かといって人の弱みにつけ込むようなビジネスに足下を見られることのないように、この記事が役立てば幸いです。

では、本日もアドバンストな1日を。

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