3月4日に7冊めの著書『あっ、モデルかな?と思ったら私だった』を出版された、豊川月乃さん。
これまで写真うつりがよくなるとか、写真の撮られかたとか、第一印象をよくするといったことについて書かれた本はありました。
でも、ここまでまるごと、モデルの見せかた、魅せかたについて書かれた本はありませんでした。
最近は、一般の方をモデルにしたファッションショーが増えています。
プロのモデルになれなくても一度はファッションショーで歩いてみたい、モデルの気分を味わってみたい方はいらっしゃるでしょう。
かつては26歳で引退が常識とされたショーモデルの世界も変わってきています。
90年代のスーパーモデルブームで一世を風靡したナオミ・キャンベルやクラウディア・シファー、ポーリーナ・ポリスコヴァは40代後半から50代を迎えたいまも現役。
それどころか80代のダフネ・セルフやカルメン・デロリフィチェがランウェイを歩くようになりました。
60歳以上の“インスタグランマ”と呼ばれるシニア世代のファッションインフルエンサーも世界中で活躍しています。
「遠い」と思っていたモデルの世界、モデルの心がけやライフスタイルは、年代を超えて参考になることばかりです。
著者の月乃さんは、モデル&ビューティースクール「sen-se(センス)」代表、パフォーマーにして現役モデル、メンタルコーチ、そして作家と4つの顔をお持ちです。
個人的にはモデル育成のカリキュラムを一般女性向けにアレンジした6ヶ月集中プログラム、sen-seのプレミアムコースでお世話になりました。
つまり、わたしにとっても、たいせつなメンターのひとり。
偶然にも誕生日がおなじです。
そんな月乃さんに新しい本のこと、その美しさの秘密、自分を変える方法から出版のヒント、そして心が折れそうなときの乗り越え方まで、月乃さんの芦屋サロンに伺い、たっぷりおを聞いてきました。
『あっ、モデルかな?と思ったら私だった』は、こう読む
新刊は、sen-seスクール生の教科書
―7冊めの出版、おめでとうございます。
3月4日発売の『あっ、モデルかな?と思ったら私だった』の目次を拝見したとき、「あっ、これはわたしがずっと読みたかった本だ!」と思いました。スクールで教えていらっしゃることの集大成というか、わたしたちが学んだことが1冊にまとまった本ですよね。
月乃 はい、おっしゃるとおりです。
これまではメンタル寄りの内容が多かったんですが、この本は身体の動かし方など見せ方のノウハウを中心に書いてます。
―出版の経緯について教えていただけますか。
月乃 おかげさまで最近の出版は、すべて出版社さんからオファーをいただいています。
編集者さんと実際にお会いして企画を拝見し、いま、「お伝えしたいな」と思っている気持ちと合致したら出版が実現するという、ほんとうにありがたい状況になっています。
―今回はビジネス書に定評のあるダイヤモンド社からですね。
月乃 担当の編集者さんは過去、たくさんベストセラーを出している方なんです。
神崎恵さんを世に出した方で、そういう意味ではプレッシャーが…(笑)。
それまでの担当者さんたちは「自分たちがこんなことで悩んできたので、解決する方法を本で代弁してほしい」みたいなスタンスが多かったんですね。
この方は、いい意味でミーハーというか、ノリが軽いんです。
それで、この方だったらわたしの新しい面を引き出してもらえそうという期待がありました。
今回の企画も「モデルのスキル面だけに絞った本はなかったですよね。それを書いていただきたい」とご提案を受けて、いままでにない切口の本になると思いました。
―まさにsen-seスクール生にとっての教科書ですね。
月乃 そう、いちばん教科書っぽいと思います。
いま言われて気がつきましたけど、ふつうは最初にテキスト的なものを出して、それからメンタルを切口にしたものを出す…。
わたしの場合、典型的な出版の順序とは逆かもしれませんね。
―2冊めの『美人養成専門学校 48の教え』はわりと教科書的でしたが、メンタルな部分についてもかなりのスペースが割かれていました。
月乃 そこからメンタルに行ったんですよね。
―モデルの美しさは外見だけじゃなく、メンタルが重要というところが、編集者さんに響いたんじゃないでしょうか。
月乃 出版企画の段階で、編集者さんはブログを見て著者の判断をされてると思います。
レッスン風景の写真は載せていますが、ブログには身体の動かし方など具体的なテクニックについては、あんまり書いてないんです、文章だけで表現するのは難しいので…考え方や心の持ち方といったテーマが中心です。
そこを読まれてるからでしょうね。
ふつうの人だって、モデルになれる
―どんな人にこの本を読んでいただきたいですか。
月乃 たとえば一般の方で「モデル並みにきれいになりたい」と考えるのは、相当美意識の高い、自分に自信がある方です。
でも、そういう方は少ないです。
一方で、モデルとは住む世界は違うけど興味はある—みたいな方は結構いらっしゃいます。
そんな方たちに読んでいただきたいですね。
じつはモデルは、生まれつき美しい人だけがなってるわけじゃないので。
ふつうの人だって、見せ方のコツを技として身につければ、モデルになれます。
この本は、いろんな人にモデルになれる可能性があることが伝わるといいな、と思って書きました。
―その可能性を開拓していくのがスクールの役目ですね。
sen-seにはプロのモデルだけでなく、プロをめざす人や一般の女性も通っておられます。
年齢層も幅広いですよね。
月乃 下は小学校低学年から上は60代ですね。
―モデルに年齢は関係ないですか。
月乃 関係ないです。
―体型も関係ありませんか。
月乃 体型はなんとでもなります(笑)。
もちろん、ある程度やせていただくことになりますが、その方法はお教えします。
身長も関係なくなってきてますね。
150cm台でも職業モデルとして成立します。
お顔だけとか上半身だけなら身長は関係ありませんし。
最近は人気ブロガーからモデルになる例も増えてます。
影響力があれば商品が売れるので、モデルになれるんです。
そういうタレント的なモデルの中には、小柄な人も多いですよ。
―ふつうの人が自分のなかに光るものを見つけて、そこに磨きをかけてモデルになっていくわけですね。
月乃 そうです。
光るもの、というのはどんな女性にも必ずあるんです。
わたしが本を出したいと思うのは、それを伝えたいからなんです。
スクールで直接お伝えするのがベストですが、そうカンタンに全国展開できるものじゃありません。
だけど本だったら、地方のどんなに小さな書店にも届けてもらうことができるでしょう。
そこが本のすばらしいところですよね。
イタいくらい勘違いをしたほうが、きれいになれる
―では、本の内容についてお聞きします。
序章に「カリスマ性は勘違いから始まる」とありますね。
うまい勘違いならいいけど、イタい勘違いはしたくないと思いますが…。
月乃 わかります。
それ、おもしろい質問ですね。
ふつうの人は、イタい勘違いはしたくないと思うでしょう。
でも、勘違いってキホン、イタいんです。
ふつうの人に向かって「『わたしは、きれい!』って勘違いしてね」と書いてるわけだから、まわりからは確実にイタいと思われるでしょうね(笑)。
だけど、そこを乗り越えていくと、まわりも納得せざるをえなくなってくるので。
ほんとうにただイタいだけの勘違いをしている人は、そもそも自分が勘違いしてると思ってないですよ。
むしろ「イタい勘違いをしないように」って考える人は相当に謙虚じゃないのかな。
ほとんどはセルフイメージが低いというか、自信がなさすぎる人のほうが多いんです。
そういう人はいくらきれいになっても「まだ足りない、まだ足りない!」と思っていて、なかなか自信がもてません。
ほめても「慰めてくれてるのね」みたいな反応しか返ってこなかったり…。
なので、いったんは「ちょっと勘違いしてるんじゃないの?」っていう方向に持っていく必要があるんです。
—逆張りですね。
月乃 そういう人はやりすぎるくらい勘違いしても、せいぜい「元気だね」「最近、明るくなったね」って言われるくらいの小さな変化です。
だけど、そうした小さな変化を少しずつ積み重ねていくことで、ほんとうにオーラが変わってくるんですよ。
生徒さんを見ていても、自信満々な人はまず来ません。
そんな人はスクールにお金を払う意味がわからないし、本も買わないんじゃないかな。
ふつう以上の美しさを求めるなら、ふつうの環境に満足してはいけない
—なるほど。たしかにそうですね。
それから本のなかに「キレイになるには、今の環境を見下すこと」というドキッとするフレーズがありますが。
月乃 これは各方面から叩かれるのを承知で書きました(笑)。
美しくなることに覚悟を持ってほしくて、わざと“見下す”というキャッチーな表現を使ったんです。
もし、他人よりきれいになりたいと思うのなら、いまのふつうの環境を「わたしにはほんとうにこの環境がふさわしいのかしら」って考えてみてほしいんですよ。
たしかに、いまの友だちと一緒に食事したり、買い物に行ったりすることは居心地いいかもしれない。
でも、人よりきれいになるということは、みんなと同じことをしてちゃダメなんだ、っていう発想になることなんです。
だから、ふつうの女の子たちが買う洋服のブランドで買い物したり、ふつうのOLさんが並ぶパンケーキ屋さんに並んで満足しないことなんです。
自分の雰囲気を変えたいなら、必ずこの「みんなと一緒がいい」という壁を乗り越えていく必要がありますね。
ビューティー・キラーにご用心
—それはプレミアムコースのレッスンで伺って、とても印象に残ってます。
「みんなと一緒」をやめようとすると、友だちのなかに「前のほうがよかった」と言う人が出てくるかもしれないよ、と…。
月乃 プレミアムは「ステージを変えたい」とおっしゃる方が多いので、よくこの話をしますね。
きれいになろうとする人の足を引っぱる存在を“ビューティー・キラー”っていいます。
ジェラシーもあるけど、友だちに置いてきぼりを食ったようで、寂しくて引き止める場合もある。
ステージを上げたくてガンガンやっている人ほど、ビューティー・キラーが出てきます。
それは変わろうとしてる証拠です。
変わることで友だちを失うかもしれないと聞くと寂しいし、怖くなるかもしれません。
でも、新しいステージに行けば、必ずそこに集まってくる人がいるので寂しくはないんです。
いまの環境も変えずに、昔からの友だちや人間関係もそのままで、新しい環境もほしい…というのはいくらなんでも無理ですよ。
きれいを更新しつづける人、そうでない人
—うまく変わって伸びていく人とそうでない人の違いは。
月乃 たとえばプレミアムのような機会を一過性のイベントのようなものと考える人にとっては、そのとき盛り上がって、卒業したら“おしまい”。
それこそ居心地のいい、いつもの環境、慣れ親しんだふつうの生活に戻ったら、そこからまた一歩踏み出すのは大変だと思います。
一方で卒業後も、あえて背伸びするような場所に出かけるとか、“きれい”を更新しようとする人は伸びていきますね。
結局は自分の人生をどんなものにしたいか、どこまでをめざすかなんですよ。
わたしはずっと伸びつづける人に情報発信していきたいし、この本もそういう人に活用していただきたいですね。
—プレミアムを卒業して、もうすぐ1年。
忘れてしまってることもたくさんあるので、この本でしっかり復習したいと思います。
自分を変え、人生を変える
変化を恐れるのは人の常。それを乗り越えるから成長できる
—そうやってうまく変化しながら、自己更新をつづけてきたので、いまの月乃さんがあるわけですね。
月乃 変わるときにはいつも恐怖を感じますよ。
「先生なんだから怖くなんかないでしょう」と思われてるかもしれないけど、新しいことに挑戦するときやステージが上がる予感がするときは、すっごく怖いです。
それはきっと、これからも永遠につづくんだと思います。
その恐怖感とどう折り合いをつけて先に進むか—なんですよね。
だけど、怖いと感じるときは、自分が変わるチャンスでもあるんです。
ホメオスタシスといって、人間にはもともと心身ともに現状を維持しようとするはたらきがあるから、変化を恐れて当然なんです。
だったら、怖いときほどゴーサインだって、自分に言い聞かせて一歩を踏み出すわけですよ。
—怖いときこそGO!ですか。
それは勇気がいりそうですね。
月乃 わたしが尊敬してる先輩や先生方も、変化は怖いっておっしゃいますから。
きっと誰でも怖いし、一生怖いんですよ。
それを乗り越えるから、ご褒美としていい方向に変わったり、大きな飛躍ができるんでしょうね。
大きく飛躍するときほど、恐怖も大きいですし。
それにね、怖いと思っても、想像するほど怖いことは起こらないものなんです。
「動きのテクニック」×「メンタル」=???
—そういえば、『心配事の9割は起こらない』っていう本がありましたね。
月乃 心配するのは、万一のために心の準備をしておきたいからだと思うんです。
だけど、起こってもいないネガティブなことにエネルギーを奪われて動けなくなるなんて、もったいないじゃないですか。
モデルのように人前に立つ人は、心の持ち方が振舞いにすごく影響するんです。
ネガティブだったり、気持ちが下向きだったら、素敵に見せたくても伝わらないんですよ。
どうしてモデルに服を着せて歩かせるかわかります?
洋服を美しく見せるだけだったら、パーフェクトボディのマネキンに着せればいいんです。
でも、生きて、動いているモデルに着せるのは、その洋服を着た女性のライフスタイルを垣間見せたいからなんです。
「あんなふうにかろやかに歩く女性は、きっと仕事帰りにお花を買って、彼と待ち合わせて」…というストーリーを見る人に感じさせるから、「あのワンピースを着たら、わたしもそんな女性になれるかも!」ってなるんです。
それはマネキンにはできないことですよ。
—sen-seのレッスンで、最後に先生方がウォーキングのお手本を見せてくださいますよね。
ほんの数分ですけど、毎回いろんなストーリーを感じるんです。
もちろん、そう感じさせるようにウォーキングできる先生方がすごいんですけど、歩いている姿からどんなドラマを感じるかは生徒の感受性の問題ですよね。
美しさを感じる力を磨くことができるのも、sen-seのレッスンだなと思いました。
月乃 わたしがとても尊敬していて、ウォーキングを習った宮川真衣先生は、コートを着て歩くと、落ち葉を踏む音が聞こえるようでした。
若い頃は「あんなモデルになりたい!」と思って研鑽しましたね。
今回の本には、わたしが19歳でモデルになってから学んできた立ちかた、指先の使いかた、身体の軸の作りかたなど、知っておいて損はないテクニックをご紹介しています。
ひととおりマスターすれば、たくさんの人にきれいだと思ってもらえるようになるでしょう。
こうした「動きのテクニック」と「メンタル」のかけ算で、モデルの美しさが完成します。
いくらうまくターンやウォーキングができても、それだけでは足りない。
メンタル的なものが加わって初めて、キラキラ輝く存在になれるんです。
変わりたいなら、まず外見を変える
—メンタル的な部分については、これまでの本をお読みいただくとして(笑)。
月乃 そうですね(笑)。
身体と心はつながってるので、内面と外見、どちらも大事なんです。
ただ、どんなに内面がきれいでも外見を構っていなければ、他人には伝わらない。
第一印象は外見で決まりますから。
—内面が変わっても、他人にはわかりにくいですもんね。
ヘアスタイルとかファッションとか、外見が変わるとすぐわかりますが。
月乃 そうなんですよ。
「変わりたい!」と思うなら、手っ取り早いのはまず外見を変えることですね。
それでほめられて自信がついたら、ますますきれいになっていきます。
先に外見を変えると、それに引っぱられて内面も変わっていくんですね。
相乗効果が加速するんです。
—sen-seがほかのモデルスクールと違うところは、どういう点ですか。
月乃 思い切ってちょっと大きなことを言わせてもらうなら、「モデルを育てているだけじゃなく、人生を変える学校」をめざしています。
レッスンでは動きのテクニックだけでなく、生きかたやライフスタイルをお伝えしてるつもりです。
自分のモデル経験を通してたくさんのモデルを見てきたせいですが、モデルとして売れっ子になればしあわせなのかというと、必ずしもそうだと言い切れない面があります。
一方で仕事はそこそこだけど、プライベートが充実してて、しあわせそうな子も…。
どっちがいいかと言うと、いちがいに言えないんですね。
それぞれの価値観の違いもあるので。
華やかな仕事だから、誤解されてることも多いですしね。
金遣い荒そうとか、恋愛関係が派手そうとか、夜遊びしてそうとか…。
—モデルは早朝ロケも多いし、連日夜遊びしてたら美肌は維持できないんですけどね。
月乃 プライベートで苦労しているモデルは意外と多いですね。
わたしは後輩に女性としてもしあわせになってもらいたいんです、モデルとして成功するだけじゃなくて。
だからsen-seは、レッスン以外にカウンセリングの時間をたくさんとってます。
一人ひとりがめざすモデルとしての目標としあわせに対する考えをすりあわせたうえで、どうすればいいかを一緒に考えていくんです。
著者として伝えていきたいこと
1冊の本で、人生が変わることもある
—著者として、月乃さんが読者の方にいちばん伝えたいことはなんですか。
月乃 自分の人生を変えるきっかけは、いつでもどこにでもあるということを、本をきっかけに知ってもらいたいですね。
人生は、いつからでも、何歳からでも、自分の思うように生きられる。
そういう人間の可能性を伝えていきたいと思っています。
—なぜそんなふうに考えるようになったんでしょうか。
月乃 わたし自身も、本に救われた一人だからです。
読者のみなさんが書店で偶然わたしの本を手にとってくださるように、わたしも引き寄せられるように本を手にとることがあります。
その本のなかに探している答えを見つけることもありますね。
著者の方が気になってほかの本を読んだり、セミナーに参加したりして、人生が変わったこともありますよ。
—たとえばどなたの本ですか。
月乃 いっぱいありますけど…いちばん影響を受けたのは石井裕之先生ですね。
とくに潜在意識については石井先生の本で深く学びました。
じつは、1冊めの本『25歳になる魔法』を出版して、なかなか2冊めが出せなくて悩んでいた頃、石井先生のセミナーに参加したことがあるんです。
質疑応答で手をあげて、そのことを率直に尋ねました。
そしたら「きょう帰ったら、すぐに本のタイトルと章立てと目次をつくりなさい」ってアドバイスしていただいたんです。
そのあと、すぐに本の内容について考え、まとめておきました。
実際に出版につながるまでには紆余曲折あったんですが、このときまとめておいた企画書が、のちのちすごく役立ったんです。
石井先生には直接薫陶を受けたわけではないですけど、本やCD、DVD教材を通して勉強させていただきました。
わたしの人生にとって大切なメンターのひとりですね。
—とくにおすすめの1冊を教えてください。
月乃 ちょっとマイナーですけど『「心のDNA」の育て方』ですね。
石井先生はすっごく辛口だけど、そこが小気味いい。
あれだけのベストセラー作家になると、まわりへの気遣いで言いたいことがだんだん言えなくなってくるのに、まったく遠慮がないんです。
わたしには八方美人なところがあるので、すごく憧れます。
お気に入りのフレーズ〜行動を変える一行の力
—お気に入りのフレーズは。
月乃 うわぁ、ありすぎる…(笑)、そうですね…。
「できることしかできない、だからできることをやる」かな。
ピンチに追い込まれたときに、よく思い出しますね。
追い込まれると、できないことをなんとかできるようにしようと思いがちですよね。
だけど、できないから余計パニックになったりする。
それをいまできることだけに集中すると、そこから展開が変わってきます。
—いまできることというと、たとえば?
月乃 たとえば、お茶をゆっくり飲むとか…。
—そんなささいなことでいいんですか。
月乃 ふつうは、大きなことをすることが、大きな成果につながると思いますよね。
でも、世のなかには自分の力では手に負えない、天命にまかせるしかないことがあります。
やることをやったら、あとはなるようになるのを待つしかないんですよ。
—問題からちょっと離れてみるわけですね。
じゃあ、お茶でなくコーヒーでもいいし、お掃除でも、お料理でも、ランニングとか運動をするのもよさそうですね。
月乃 そうなんです。
もし、ああなったらこうしようとか、こうなったらああしようと未来の心配をすると、どんどん落ち込んじゃいますよね。
まだなにも起こっていないうちから、悪いほうへ悪いほうへ考えてしまう。
気持ちはわかるけど、それ、パワーのムダだし、セルフイメージもどんどん下がってしまうし…。
起こってから対処したらいいんです。
手に負えないことは、必要以上に深追いしない。
お茶でも飲んで気分転換したほうが、よっぽどいいアイデアが出ますよ。
—できないことを無理にしようとするから、状況も変わらないわけですね。
月乃 そうですね。
どう変わりたいかが明確になっていないから、というのもあると思います。
ゴールが見えなければ、走っている方向が正しいかどうかもわからないじゃないですか。
客観的になれる自分なりの方法を持っておくといいですね。
そういう時間を持つことがすごく大事です。
読書習慣は、人生に深みを与える
—出版されるようになって、変わったと感じることはありますか。
月乃 本を出すようになって、人の魅力を多面的に見るようになりましたね。
以前はもっと表面的なものの見かたをしていた気がします。
たとえば男性だって、中年のふつうのオジサンより、若いメンズモデルのほうが、外見的にはイケメンでカッコいいですよね。
いまは、オジサンの味のある表情っていいな、と思うんです。
魅力は美男美女だけでは語れない、すごく奥が深いものです。
外見と内面がマッチして、その人らしい魅力が輝く。
そして誰にでも、その人ならではのキラキラした魅力がある。
それをこれからもスクールや本で伝えていきたいですね。
—次回作もすでにお決まりとか…。
月乃 はい、次は初めてのムック本になります。
出版はすごくエネルギーが必要です。
書くことは大好きですけど、孤独な作業ですし、集中力も必要ですし。
でも、わたしには伝えたいことがありますし、本が好きなので、これからも出版はつづけていきます。
ここに来るまで、ほんとうに大変でしたが、おかげさまで年内にはムック本を含めて2冊、来年も1冊すでに決まっています。
次回作も楽しんでいただけるように、執筆がんばります(笑)。
—はい。次も、また次の次の本も、期待しています。
どうもありがとうございました。
インタビューを終えて
わたしはモデルではありませんが、sen-seで月乃さんと出会えたおかげで、今回、貴重なお話をうかがうことができました。
モデルは「外見を見せる=魅せる」仕事だと思われがちですが、じつはその外見は、メンタルによってつくられています。
それは、sen-seでも月乃さんがクラス生に対して、つねに伝えておられることです。
素敵な内面が伝わらない外見ならもったいないですし、見かけだおしの外見なら、人として残念。
内面と外見の両方に磨きをかけていくことは、職業モデルでなくてもたいせつなことだと思います。
服をただステキに見せるだけなら、マネキンに着せればいい。
なぜ人間のモデルが服を着てウォーキングして見せるかということは、職業モデルの厳しさであり、難しさでもあると同時に、すばらしさでもあります。
モデルになる、ならないはともかく、いまの自分が他人から「どう見えているか」に気づき、「どう見られたいか」を考えるきっかけになる1冊です。