スキルを掛け合わせて自分をメディアに

翻訳できない感覚【No.26】We do it live.– ライブする。

rallehofi / Pixabay

 
We do it live. ライブする。

あらゆる授賞式の中で、もっとも好きなのがトニー賞です。
トニー賞は、ブロードウェイの演劇人やミュージカル関係者のお祭り。
授賞式の中でさまざまな作品のハイライトが再現され、それが楽しみのひとつなのですが、授賞式そのものが壮大なショウなのです。
オスカーやグラミー、ゴールデングローブ賞に比べると、レッドカーペットこそ地味ですが、アワードのパフォーマンスが華やかでドラマチック。
とくにその年のノミネート作品を題材にした司会者によるオープニングナンバーは毎回話題になります。

今回のジェームス・コーデンによるオープニングナンバーは、ここ数年で出色の出来!
熱唱のあとは観客総立ち。
めったにないことです。

ネットフリックスやアマゾン、Huluなどストリーミング配信サービスの台頭で、演劇やミュージカルなどのステージは時代遅れのコンテンツになりつつあるのか。
そこを自虐ネタでくすぐりながら、ライブならではの魅力を歌い上げます。

きょうの動画はそのオープニングナンバー全編。
全体の大まかな流れを記しておくので、ヒアリングの参考にしてください。

シーン1:自宅で番組を再生中
ネットフリックスやアマゾン、Huluなどストリーミング配信サービスをディスる。
「リモコンを置いて、外に飛び出そう」と言うと、壁が上がり、ラジオシティ・ミュージックホールの観客席が。

シーン2:カウチからダンサーたちが続々登場
「ライブにはハッシュタグをつけることも、ツイートも、再生もできない」
「二度とない瞬間を共有できるのがライブ」
「最高のものを届けるのがわたしたちの誇り」
…そして早替りで赤いタキシードに!

シーン3:第73回トニー賞授賞式の挨拶
なぜか席を立ってトイレに向かうブライアン・クランストン(ドラマ『ブレイキング・バッド』主演で大ブレイク、今回『ネットワーク』で2回目の演劇主演男優賞を受賞)。
「膀胱が破裂しそう!」と激怒している。

シーン4:今年ミュージカル作品賞にノミネートされた作品の紹介
『エイント・トゥー・プラウド』、『ビートルジュース』、『トッツィー』、『ハデスタウン』、『ザ・プロム』の5作品。
続いてミュージカルリバイバル作品賞にネミネートされた2作品、『オクラホマ!』と『キス・ミー・ケイト』。

シーン5:5分休憩
『コーラスライン』の“I Hope I Get It”でフィニッシュを決めて、休憩と呼びかけ。
「いや、ライブに休憩なんてない!」
「月額課金もない!」

シーン6:テレビだって好き!
作品賞にノミネートされたキャストたちがステージに集まって合唱。
「舞台は高尚なミッション、ぼくらは伝統の継承者」
「舞台はテレビよりずっといい」
ただし『ゲーム・オブ・スローンズ』を筆頭に、『ハンドメイズ・テール』『キリング・イブ』『ウォーキング・デッド』『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』…(以下、あまりに多いので省略)…それからぼくの『レイト・レイト・ショー』を除いて」

「…ということを言わせたのは、オードラ・マクドナルド(トニー賞を6度も受賞している名女優。ドラマでは『プライベート・プラクティス』のナオミ役が有名)で、ぼくはテレビが大好き。
だって、舞台よりテレビにたくさんお金を稼がせてもらってるから!」
衝撃の告白のあと、「この中で『ロー&オーダー』で死体役をやったことある人は?」と聞くと大半が手を挙げる。

※注:『ロー&オーダー』は、アメリカでシーズン20まで続いた最長寿番組のひとつ。スピンオフの『ロー&オーダー 性犯罪特捜班』も今年シーズン20に入り、継続中。

シーン7:ぶっちゃけブロードウェイってところは
作品賞キャストがはけ、ダンサーたちとブロードウェイの実態を暴露。
チケットは高く、開演直前でも安くならないことや劇場までの渋滞と混雑、劇場によってはシベリア並みの寒さなどなど。
「それでもライブには言葉にできない一瞬一瞬がある!」

シーン8:ライブしよう!
幕があくと、一度はけた作品賞キャストが再び登場。
客席の通路からも次々とステージへ。
「センス・オブ・ワンダーが目覚め、エネルギーあふれるライブ」と賛辞を贈り、「これがトニー賞、みんながイキイキと生きてる」と、全員で大合唱。

 

オープニングシークエンスが10分超はかなり長い。
にもかかわらず中だるみしないのは、密度が濃いからですね。

で、気がついたのですが。
外国語を理解するには、語学力以外の知識もけっこう大事だということに。

わたしは英語のヒアリング力は低いです。
英検もTOEFLも受けたことないし、留学経験もありません。
ただ、ミュージカルや演劇やダンスや音楽や映画など海外のエンタメが大好きです。
それなりにバックボーンがあるので、「いまからジェームス・コーデンがトニー賞のオープニングメドレーを歌うよ!」という条件つきだと、その方面の知識が語学力不足を補ってくれるんですね。

しかも、英語に対して「構える感じ」なしで集中して聞けます。
むしろ「よっしゃ、来い!」って感じ。
次になにが繰り出されるか、楽しみでしょうがない。

そういう状態でいると、アタマのなかで翻訳しないんですね。
日本語に置き換えなくても、直接、感覚に入ってくる。

“We do it live.”は、無理やり「ライブする」と訳しましたが、この“live”には、演劇やミュージカルが生モノであること、放送がライブ(生中継)であること、それらに触れることで感じる生命の躍動感、ぜんぶひっくるめての“live”ということが伝わってきました。

日本語でも英語に置き換えにくい単語がいくつもあります。
「はんなり」とか「じゅんさい」とか、日本語と日本文化に対する知識と感性がなければ、日本語で説明することすら難しい。
ましてや外国語になんてできっこない。

そんなときはもう、そのまま伝えるしかありませんね。
で、こういうことなんだよと言葉を重ねていく。

置き換えにくい単語にこそ、その言葉の文化がぎゅっと詰まっている気がします。
そしてそういう「翻訳しにくい部分」に惹かれるんですよね!

さて、第73回トニー賞授賞式は、6月15日にWOWOWで日本語字幕入りでオンエアされます。
まあ、雑なあらすじなので多分大丈夫だと思いますが、間違ってたら笑ってください。
わたしも放送を楽しみにしています。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください