人生は、クリエイティブ・ディレクション:50代からの「おしゃれの学校」

射手座の男〜『いだてん〜東京オリムピック噺〜』第45回 火の鳥

大河ドラマ『いだてん』ブログをお送りしています。

東京オリンピックの事務総長を解任され、意気消沈していたまーちゃん宅に、夜毎仲間たちがやってきて、「裏組織委員会」を繰り広げることに。水面下で司令塔となったまーちゃんは、表のメンバーに名案を授けていくが、聖火リレーのコースだけがどうしても決まらない。そんなある日、表で行われたコンパニオンの面接に、聖火リレー最終ランナー志望の金栗四三がやってくる。もはや四三の顔を知るメンバーがいなくなった組織委員会では相手にされず、岩ちんにあるものを託して去っていく。果たしてそれは、かつて大塚の下宿に貼っていた、四三が走破した記録をつけた日本地図だった。さらにまーちゃんの次女・あつ子の発案もあって、日本国内を4コースにわけて縦断する計画がまとまる。オリンピック開催はあと1年と迫り、東京の街は突貫工事が続く。非難の矛先は、まーちゃんと袂を分かつことになってしまった都知事の東龍さんに向けられる。


<あらすじ>事務総長を解任されてしまった田畑(阿部サダヲ)だったが、決してあきらめることはなく、自宅に岩田(松坂桃李)や松澤(皆川猿時)ら組織委員を集めてひそかに開催準備をあやつり始める。田畑とたもとを分かつ形となった東京都知事・東 龍太郎(松重 豊)は、日本橋を覆う高速道路や渋滞の悪化など、開発への批判を一身に浴びていた。元ボート選手としてスポーツへの熱い思いを秘め、1940年でかなわなかった悲願のオリンピック開催に向けて奮闘するが──。NHK公式サイトより)

 

星はなんでも知っている

第45回が放映されたのは12月2日でしたが、1日前の12月1日は、まーちゃんの誕生日でした。おめでとうございます、生きていれば、121才!

ふと気になって、久しぶりにホロスコープをつくりました。西洋占星術で使うその人がうまれたときの星の配置図です。占星術師はこのチャートを使って、いろいろなことを読み取ります。ホロスコープを作るには、正確な生年月日、出生時間、出生地が必要です。残念ながら出生時間がわからなかったので完全版ではないのですが、試しにつくってみたのがコレ。

もうひとつ残念なことに、西洋占星術に関してはただの趣味なので、精度は『いだてん』に登場するバー『ローズ』の占いババア、マリーさん並ですが、ネタとしてまーちゃんをリーディングしてみました。

ホロスコープ作成:My Astro Chart

誰のホロスコープにも特徴があります。「偏り」というとネガティブですが、それすなわち「個性」のこと。まーちゃんのチャートも、とても興味深い。そしてとっても「まーちゃんらしい」。

まーちゃんは星占いでいうところの、いわゆる「射手座」うまれ。このチャートでとても特徴的なのは、10個ある惑星のうち5個(太陽、金星、水星、土星、天王星)が射手座に集中していること。それはつまり、いろいろな意味で射手座の要素が強く出る人なんですね。


射手座のシンボルは、人間の上半身と馬の下半身を持つ神獣ケンタウロス。そこから、正義感が強く、自由を愛し、曲がったことが嫌い。自分が正しいと思ったことを社会に還元したいと強く願うのも正義感ゆえなので、事務総長解任の際に「私の知識と経験をいくらでも差し出す」と言ったのも、心底そう願っているからなんですね。

裏表がなく、さっぱりした人柄で、上下関係にもこだわりがない。直感的に「これ!」と感じたところに飛んでいきます。逆に言えばデリカシーに欠けるんですね。思ったことをズケズケと口にしてしまうので「意外と嫌われてるんです」。もちろん、うまくいって高橋是清から大金を引き出すこともできれば、川島大臣のように、知らないうちに恨みを買ってしまい、しっぺ返しをくらうことも…。

ケンタウロスが放つ矢のように、的(目標)に向かって飛ぶことが大事なので、プロセスはやや大雑把。指示も「アレ」とか「コレ」とかが多く「あとは察して」。でも、大間違いでない限り、文句は言わないのでやりやすい面もあるんですよ。ねぇ、菊枝さん。

また、射手座に5つある惑星のうち、太陽と金星はほぼ1度違いで重なった、とてもタイトなコンジャンクションを形成しています。どういうことかというと、モテる(笑)。甘え上手で、目上の人にかわいがられやすい。彼らから受けた好意や影響を無意識のうちに自分の目的や理想実現ため、うまく活かしていける人。嘉納治五郎先生、緒方竹虎、高橋是清などはドラマにも登場しましたが、実在まーちゃんも目上からの引き立てが相当あったと考えられます。さらに月が蟹座であることから、家族的な愛情やつながりを大切にします。庶民的で気さく、偉くなっても偉そうぶらない、うまれながらの愛されキャラ。蟹座は月の本来の位置でもあり、強化されますから「なーんだ、田畑さん、オリンピックだけじゃないじゃん!」なのも納得。

まーちゃんの「拡大」「発展」「幸運」を象徴する木星は蠍座にあります。蠍座は表舞台より裏舞台が得意で、V字回復力は12星座随一。事務総長解任は不本意だったかもしれないけれど、一度、裏に下がってから復活することは、すでにホロスコープに示されていたりします。しかも蠍座の守護星である冥王星は、まーちゃん自身を表す射手座の太陽とオポジット(向かい合わせ)の位置に。これは天命を持った人がそこから外れようとすると、強制的に本来の位置に戻される傾向を示します。くしくも岩ちんが「オレにはこっちが「表」です」と言ったように、「裏」にまわることこそ、天命をまっとうする鍵だったようにも読めます。

女子スポーツの「未来は今」

ホロスコープはちょっと横に置いて、今回は大事なエピソードが2つありました。ひとつは、金栗さんが日本全国を走破したことが、紛糾していた聖火ランナーのコース決定に回収されていくこと。もうひとつは夜明けにシマちゃんが帯を解いて駆け出したことから始まった女子スポーツの集大成が描かれたことです。

人見絹枝や前畑秀子の前にきっといたはずの、名もなきスポーツ女子たち。シマちゃんは架空の人物だけど、彼女は歴史に名前も残っていない市井の人物の代表です。
それからも女子アスリートの戦いはつづき、オリンピックにすべての国・地域から女子選手が参加し、全競技で男女の種目が実施されるには、2012年のロンドン大会まで待たねばなりません。
わたしたちがいま、あたりまえのように享受していることは、先人の戦いの成果。それはスポーツに限ったことではないのですが。

ビジュアルの力、もう一度

すべてのきっかけは、第1回で嘉納先生が1枚のカラーポスターによってオリンピックに魅せられたことでした。今回は岩ちんがアフリカ諸国をまわり、かつてクーベルタン男爵が嘉納先生にしたようにプレゼンします。ストックホルム大会のポスターに描かれていた日の丸に感激した嘉納先生と同じく、コンゴの人々は東京オリンピックのポスターに黒人選手が写っていることに心を動かされます。
(そしてコンゴから2人の陸上選手がオリンピックに初参加するんですよね。かつての四三と弥彦みたいに!)

第3号ポスターもできあがりました。亀倉雄策さんが組織委員会より先に、色校正をまーちゃん宅に届けたのも史実どおり。
東京オリンピックの美しい招待状も登場しました。これまで日本は「招待される側」だったので、「受け取った人が参加せずにはいられなくなるほどグッとくる」デザインをリクエストしたはずです。なにも言わなくても見ただけで伝わるーそれが視覚情報、ビジュアルの強さであり、デザインの力です。

12星座の「サークルゲーム」

そんなわけで、第1回でオリンピックに出会った日本人が、今度はアフリカの人々にオリンピックを紹介する立場になっていた第45回。嘉納先生はもういないけれど、その意志はまーちゃんや岩ちんに受け継がれています。そう、時間はまっすぐではなく、螺旋を描くように進化するんです。

それを教えてくれたのが、ジョニ・ミッチェルの『サークル・ゲーム』。前回サブタイトルの項で『ぼくたちの失敗』のユーミン版が『「いちご白書」をもう一度』だと書きましたが、その映画『いちご白書』で主題歌として使われた曲です。

We’re captive on the carousel of time 
We can’t return, we can only look
Behind from where we came 
And go round and round and round In the circle game
ーJoni Mitchell“The Circle Game”

わたしたちは時間の囚われ人
戻ることはできず 来た道をただ振り返るだけ
めぐってめぐる サークルゲームのように
ージョニ・ミッチェル『サークル・ゲーム』より

ちょうど『いちご白書』の予告編があって、この曲が2回流れます。歌っているのはバフィー・セントメリー。

バー「ローズ」で、「あの頃、水は澄んでいて気持ちよかった」と現役ボート選手だった頃を振り返る東龍さん。まるで汚水問題が紛糾している2020年の東京オリンピックみたい。『いだてん』のシナリオが書かれたのはそれより前だと思いますが、未来を予見していたかのよう。単に歴史はめぐってめぐるサークルゲームなのかもしれません。だからこそ、歴史に学ばないといけないんだけどね!

そして占星術もまた、魂が螺旋状に成長する過程を描いた円環構造の物語が背景にあるんです。12星座ってなにも適当に選ばれたわけではなく、赤ちゃんとしてうまれ、成長し、成熟し、やがて無の世界に還っていく人の一生を、牡羊座から魚座にいたる12のステップで1周し、また牡羊座から始まるということを螺旋状に繰り返しているんです。なんのこっちゃワカランと思いますので、石井ゆかりさんの『12星座』を読んでみてください。占星術がよりおもしろく読めるようになります。

で、まーちゃんのホロスコープに戻ります。「偏り」は「個性」と書きましたが、まーちゃんは10個の惑星のうち7個が柔軟宮(射手座、双子座)に入っています。なので、よくいえば融通がきくけど、悪く言えば変節漢と受け取られかねない。口ぐせになっている「違う!そう!」とかね。どっちやねん!
ホロスコープ的に結果オーライとはいえ、ジャカルタのアジア大会後、「公式大会だった」「公式大会じゃなかった」と意見が二転三転したうえ、タイミングの悪さも絡んで失脚したし。

しかも、「着実・冷静」な地象星座がひとつもないので、一人でどこかに飛んでいかないように、要所を押さえてくれるパートナーが必要。ホロスコープまでは見てませんが、まーちゃんの評伝に「親友」と書かれていたカクさんこと松沢一鶴が乙女座(地象/柔軟)。カクさんあってのまーちゃんだったことはドラマを見てもわかりますよね。さらに、まーちゃんのお助けマンとして登場することが多い平沢さんも乙女座でした。

裏の組織委員会に入れない東龍さんは山羊座(地象/活動)。各方面から責められて、いまはつらい立場ですが、打たれ強さと粘り腰で、なりふり構わずやり遂げるはずです。「晩節を汚してもオリンピックをやりたいんだよ!」と言いましたが、山羊座は晩節でこそ輝く星なので大丈夫でしょう。


そうそう、岩ちんは生年月日がわからないんですよね。まーちゃんが懇願して秘書になってもらったほどの人材。情報求む!

ちなみに嘉納治五郎先生も射手座、金栗四三は獅子座。ともに火象星座でした。エネルギッシュでパイオニア向き。『いだてん』は柔道とマラソンとオリンピックのパイオニアの物語。それは情熱と開拓を象徴する「火」をつないでいく鳥たちの物語でもあったのです。


今回のサブタイトル/火の鳥

ということで今回は『火の鳥』。
手塚治虫のライフワークである作品群『火の鳥』とロシア民話をベースにしたストラヴィンスキーのバレエ音楽『火の鳥』。

自ら火に飛び込んで生まれ変わる不死鳥という日本人が思い描く火の鳥のイメージは、手塚作品に負うところが大きい。漫画を原作として、何度もアニメ化、実写映画化、舞台化もされています。

バレエ音楽は、ストラヴィンスキーが手がけました。曲だけをコンサートで演奏することも多い。ジャンルでいえばクラシックですが、冨田勲のシンセサイザーやプログレッシブロックのイエスのライブでもオープニングに演奏されていてメロディはおなじみだと思います。

ところで手塚先生が宝塚歌劇の大ファンだったことは有名ですが、その影響かバレエも楽しんでいたようで、『火の鳥』はバレエにインスパイアされてうまれた作品でした。この2つは明確に関連があったんです。

ぼくはある劇場で、ストラビンスキーの有名なバレエ「火の鳥」を観ました。バレエそのものももちろんでしたが、なかでプリマバレリーナとして踊りまくる火の鳥の精の魅力にすっかりまいってしまいました。
火の鳥の精は、悪魔にとらえられた王女を救うために、出発する王子の案内役をつとめる鳥で、ロシアの古い伝説なんだそうです。その情熱的で優雅で神秘的なこの鳥は、レオに匹敵するドラマの主人公として最適のように思えました。
そういえば、どの国にも、火の鳥のような不思議な鳥の存在が伝説としてのこっています。蓬莱山伝説にあらわれるホーオーという鳥、あるいは不死鳥とよばれている一連のいいつたえなどに、なにか超自然的な生命力の象徴を鳥の姿に託したような感じがします。 
ー手塚治虫『私と火の鳥』(『手塚治虫文庫全集 火の鳥(2)』より)


バレエ『火の鳥』は、1910年、バレエリュスが初演。手塚先生も魅了されたエネルギッシュな火の鳥の舞はこちらの動画で。
ニューヨークシティバレエのプレインシパル、テレサ・ライクレンが解説しています。

NYCBの舞台背景の絵画と衣装を、画家のマルク・シャガールが手がけているんですね!
シャガールの絵画に包まれているようで、さぞ幻想的なことでしょう。

衣装で思い出したけど、1978年に『東京オリンピック』を監督した市川崑が映画化した『火の鳥』で、衣装を担当したのがコシノジュンコ。いまそのまま着ても違和感ない、ジェンダーレスで着られるビッグシルエット。それにしても草刈正雄が若い。

さて、裏にまわって、再び息を吹き返したまーちゃんのオリンピック。
引退か、継続か悩み、再始動した日紡貝塚女子バレーボールチーム。
そして病後、再び高座に上がった古今亭志ん生。

いろいろな復活が描かれた今回ですが、「火」を届けるする聖火ランナーについては、次回『炎のランナー』でくわしく描かれます。

ネタがつきない『いだてん』、次回も楽しみです。

参考:
二つの「火の鳥」〜バレエリュスと手塚治虫〜:新国立劇場
1964東京五輪“東洋の魔女”率いた鬼の大松 当時のエース・井戸川さんが明かす苛烈秘話:東スポ(2019.12.8)
大松博文と松平康隆 オリンピックを身近なものにした【オリンピック レガシー 人物編】 : 佐藤 次郎 (笹川スポーツ財団)
東洋の魔女に魔法をかけた「鬼」の大松は仏だった :日刊スポーツ(2016.2.10)

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