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楽しいことは、これから起こる〜『いだてん〜東京オリムピック噺〜』第37回 最後の晩餐

大河ドラマ『いだてん』ブログをお送りしています。

東京オリンピック開催は決まったものの、日中戦争が始まり、国内からはオリンピック反対論が噴出。治五郎さんはカイロのIOC総会で熱弁をふるい、日本開催確約を取り付けてしまいます。カイロからの帰途、氷川丸で声をかけられた外交官・平沢和重と船内で行動を共にし、いままででいちばんの出来事はなにかについて話し始めるのでした。そしてその日、体調を崩した治五郎さんは…。


<あらすじ>
嘉納治五郎(役所広司)は開催が決定した1940年東京オリンピックの準備を進めるが、日中戦争が始まった日本ではオリンピック反対論が沸き起こる。理想のオリンピックとは程遠い状況に激しく葛藤する田畑(阿部サダヲ)を金栗四三(中村勘九郎)が訪ねる。オリンピックへのあふれる思いを語り合う2人。嘉納はエジプトでのIOC総会に参加し日本開催を危ぶむ声を封じ込める。帰国の船で乗り合わせた外交官・平沢和重(星野 源)に、自らの夢を語るが──。NHK公式サイトより)

 

喜びも悲しみも、すべてはオリンピックとともに

去年のことですが、Facebookに「今週、一番良いことは」と尋ねられました。
あれかな、これかなと考えて「それも楽しかったけど、一番ではない」と思ったんですね。

それでこう答えましたとさ。



この答えに「いいね」が31個つきました。だけど、個人的にはあまりよろしくない理由が2つあります。
ひとつは、アメリカ人の写真家イーモジン・カニンガムのパクリだということです。



作品のなかでお気に入りはどれかですって? 明日撮影する写真よーイーモジン・カニンガム



Imogen Cunningham – Wilson’s Photographic Magazine, Volume 51, 1914 The Photographic journal of America


Imogen Cunningham  Unknown(Succulent)


彼女が撮影する植物の写真がとても好きです。写真学校で勉強していた頃、モノクロで彼女の作風を真似して撮りました。
彼女は人物の写真も別次元の人みたいな独特の雰囲気があります。チャップリンにも、最高傑作は次回作と答えていたという都市伝説がありますが、彼は自伝で『殺人狂時代』と書いていました。これについては、日本チャップリン協会会長で演出家でもある大野裕之さんもこんなふうに書いておられます。

あまりよろしくない理由の2つめがこれ。引用します。

「ネクスト・ワン」がベストで、「次はもっとうまく出来る」なんてのは凡人の台詞です。現状に満足しないのは誰だってできる。「絶えざる向上心」なんて誰でも言える。チャップリンは、出来上がった作品に心底満足できるまで、自分を追い込み、血のにじむ努力をしたわけです。それはただの「現状肯定」とも、凡人の逃げ口上に近い「向上心」ともまったく違う、非常に厳しいものですー大野裕之(トヨタの豊田章男社長の偽チャップリン発言について、「ウォール・ストリート・ジャーナル」の取材に答(ブログ『人間のお大野裕之』より:2012年5月12日)

いやもう苦し紛れの答えだって、見透かされてるじゃんねぇ!


…なんだけど、治五郎さんが平沢さんの「楽しいことは東京で起こる」という発言に同意したのは、苦し紛れではありません。そして、このやりとりもまた事実から。

これまで一番楽しかったことの候補として、治五郎さんは羽田の競技会やロスオリンピックなどをあげています。柔道を世界の共通語にした治五郎さんほどの方であれば、講道館の設立とか、かつては無敵だったとか、旭日大綬章をもらったとか、いくらでも個人的な偉業があるはずです。

でも、彼が「いちばん」にノミネートするのは、オリンピックのために人々とともにおこなったことばかり。つまり、このじーさんは、自分がほめられるより、同じ夢を持った仲間たちとおもしろいことをするほうが楽しくて仕方ないわけですね。だからその先にある東京オリンピックがいちばん楽しいに決まってると考えるわけです。

…知らんけど。

柔道が正式種目になる日

治五郎さんとラトゥール伯の海を超えたジジイ同士の友情(byまーちゃん)を改めて感じるシーンが出てきました。棺には日の丸ではなくオリンピック旗がかけられていたし、ほんとうにオリンピックに捧げた一生だったんですね。新聞には各国IOC委員から死を悼むコメントが多数寄せられていました。



そのなかには日本人はあまりよく知らない治五郎さんの一面が垣間見られて、時間をかけて培ってきた確かな人間関係を感じました。治五郎さんってコスモポリタンだったんだなぁ。


考えてみたら、日本人が初めて出場した1912年ストックホルム大会から、1936年ベルリン大会に至るまで、全部知ってるのって治五郎さんだけなんですよね。だから『いだてん』て、ほんまは治五郎さんが主役ちゃうん!と言いたいところですが、たしかに1940年の東京招致に成功すけど、大会は返上。これじゃドラマにならない。じゃあ、どうする?

オリンピックに初めて参加した日本人選手、金栗四三はストックホルム以降3大会に出場。まーちゃんは次の1928年アムステルダム以降に参加。しかも64年東京大会招致の立役者。なに、このバトンタッチ! 「これに気づいた人、天才」といま思いました(遅)。




太字は日本が参加した大会、グレーアミは中止になった大会。中止になっても回数は飛ばさないんですね。12回の次は15回。日本は敗戦国のため参加できず。

ロスオリンピック のとき、治五郎さんはまーちゃんになぜ柔道をオリンピック競技にしないのかみたいなことを聞かれます。まだ時期が早いとかなんとか…オリンピック競技になるのは1964年東京大会からです。いつぞや「150才まで生きる」と言っていたと思いますが、せめて104才まで生きてくれていれば…。


治五郎さんは、日本に「オリンピック精神」を注入した人なんですね。その遺志を継いだ人たちの物語が、これから始まります。たしかに、これから『いだてん』のほんとうにおもしろいところが始まるのでしょう。

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第37回に登場したお料理をご紹介☝🏻 * 「カッパに戻ってください」 菊枝お手製のカッパ料理4品🍴 【カッパの炊き込みごはん】は、しょうゆ、酒、みりん、ダシをベースとして、 具材は、ごぼう、油あげ、きゅうりとシンプル! ぜひ、お試しください☘ * * 「疲れたことなど一度もない!」 嘉納治五郎の元気の源⁉️ 厚さ5センチ弱で、2ポンドもある【巨大なステーキ】💪🏻 あまりの厚みに、役所広司さん、星野源さんも現場で驚いたそうです😮 * * 「羽田に競技場を作ってね、そこに、いだてんが真っ赤な顔をして現れたんだ」 嘉納治五郎が思い出を語る場面で登場した【隈取(くまどり)クッキー】 美大出身の消え物(※)担当さんが細い筆を用いて描いたこん身の力作✨ 1枚1枚丁寧に作られています☺ ※消え物…ドラマで登場するお料理や生花などのこと。

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今回は最終章に向かう前に、ちょっとそれまでの振り返りというかミニ総集編的なことをする回だった気がします。元気なじーさんが退場して、四三さんもじーさんになり、まーちゃんもオッサンになり、孝蔵は志ん生になり、東京オリンピックというゴールに話がどう転がっていくのか。
もちろん最後まで見届けますからね!


第37回のサブタイトル/最後の晩餐

いまさらいうまでもないレオナルド・ダ・ヴィンチの歴史的傑作。




1999年に20年がかりで大規模な修復が終わり、いろいろなことがわかりました。皿の上は魚料理だったとか、イエスはやや口を開いていたとか、一点透視図の中心となった釘痕が見つかったとかなんとか。以前、NHKで失われた部分をCGで再現する番組をやっていましたね。

ダン・ブラウンが『ダ・ヴィンチ・コード』でとりあげた『最後の晩餐』にまつわる謎は、原画の激しい損傷がもたらした見間違いだったのでありましょう。まあ、フィクションとしてはおもしろいと思いますが。そういう意味では、美術品修復師はアートの謎を解く探偵かもしれません。

さて、『最後の晩餐』、あまりにも有名すぎて、いろいろなパロディ作品が存在します。
たとえばアインシュタインを中心にした12人の科学者“Scientists’ Last Supper”とか、ケンタッキーおじさんを中心にしたファストフードキャラとかスターウォーズ版とか。海外ドラマのイメージヴィジュアルにもよく使われています。わたしが覚えているだけでも『LOST』『ソプラノズ 哀愁のマフィア』『Dr.HOUSE』、あとアニメだけど『シンプソンズ』など。
ほかにも「最後の晩餐、パロディ」で検索すると山のように出てくるので、興味あるかたは試してみてください。

ここでは、わたしが好きなのを2つ紹介します。

ひとつはトマス・ピンチョンの原作をポール・トーマス・アンダーソンが監督した『インヒアレント・ヴァイス』。原作の『LAヴァイス』でも言及していた『最後の晩餐』ですが、劇中ピザを食べるシーンで、偶然この構図ができあがるように演出しています。



こちらは宣伝用のヴィジュアル。こだわってますね〜(笑)。
主演はいま『ジョーカー』で話題のホアキン・フェニックス。



ピンチョンにしてはわかりやすいですが、探偵小説のようで探偵小説ではなく、ゆるふわな筋に無駄な情報が膨大に詰め込んであるので、好き嫌いはわかれるとおもいますが。





もうひとつは、ファインアートの画家、リー・バンクスさんの作品。ロック版『最後の晩餐』。

いちおう、左からフレディ・マーキュリー(クイーン)、マイケル・ジャクソン、デヴィッド・ボウイ、ボブ・マーリー、ジム・モリソン(ドアーズ)、エイミー・ワインハウス、ジョン・レノン、プリンス、カート・コバーン(ニルヴァーナ)、ジョージ・マイケル、エルヴィス・プレスリー、マイケル・ハッチェンス(インエクセス)、ジミ・ヘンドリックス。

「ぼくらはキリストより有名」と言ったジョンがキリストポジションなのね。ジャニス・ジョプリンじゃなくて、エイミー・ワインハウスなのね。
好きだわー、これも(笑)。

あと、著作権の関係で出しませんが、マリテ+ジルボーの広告も検索してみてください。『最後の晩餐』を扱ったビジュアルの中でもっともスタイリッシュですが、フランスやイタリアなどでは掲載禁止になりました


さて次回は『長いお別れ』、ピンチョンの『LAヴァイズ』も実は下敷きにしたというレイモンド・チャンドラーのハードボイルド探偵小説からです。
ネタが尽きない『いだてん』、次回もたのしみです!

   

※タイトル画像キャプチャ:NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』公式サイト

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