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戦争と平和〜『いだてん〜東京オリムピック噺』第34回 226

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第34回「226」ご覧いただきありがとうございます。 「私が緒方だ。この社の代表者だ」 「遅えじゃねえか、こちとら昼からラジオなんだよ、雪のせいかい?」 「だったら、やめたらどうです?」 「働かん、走ってばかりの息子でん、四年もおらんかったら寂しか、それが親じゃ、こんアホが!」 「あんた、最後のお勤めしっかりね!」 * #いだてん #226 #緒方竹虎 #リリーフランキー #中橋中尉 #渋谷謙人 * #美濃部孝蔵 #森山未來 #おりん #夏帆 * #酒井菊枝 #麻生久美子 * #金栗四三 #中村勘九郎 #池部スヤ #綾瀬はるか #池部幾江 #大竹しのぶ * #小梅 #橋本愛 #清さん #峯田和伸

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その日の早朝、陸軍の青年将校らが中心になって起こしたクーデターは、のちに2.26事件と呼ばれるようになる。暗殺された複数の閣僚のなかには高橋是清もいた。朝日新聞社も襲撃され、ロス五輪の写真や資料が踏みにじられる。そんな戒厳令下の東京に、IOCのラトゥール伯がやって来る。葛藤を抱えつつ、人力車夫の清さんとアテンドに奔走するまーちゃん。治五郎さんはムッソリーニに接近したことを詫びて筋を通す。路地裏で展開される、子どもたちの下町オリンピックや清さんの日の丸弁当に、ラトゥール伯は東京での開催に希望を見出して帰途につく。一方、熊本では上京したいと幾江とスヤに訴える四三。一見、バラバラな出来事が、孝蔵の『目黒のさんま』に絡めた、ひとつの“噺”として語られていく。


<あらすじ>
1936年2月。陸軍の青年将校らによるクーデター、二・二六事件が発生。閣僚らが暗殺され、田畑政治(阿部サダヲ)の勤める新聞社も襲撃を受ける。戒厳令下の東京でオリンピック招致活動を続けることに田畑は葛藤。嘉納治五郎(役所広司)とも対立するが、IOC会長の候補地視察の案内役を任せられる。熊本では金栗四三(中村勘九郎)がスヤ(綾瀬はるか)と幾江(大竹しのぶ)を前に、招致に協力するため上京したいと訴えるが──。NHK公式サイトより)

 

戦争は気づかないうちに始まる

仕事先に大学を出たばかりの新人さんがいます。まじめで、どちらかといえば地味な一般事務の職員さん。彼女はいまだかつて1度も選挙に行ったことがないと言います。そんな彼女が、参院選のあとでこんな発言を。

「日本なんかもう1回戦争で負けて、なくなっちゃえばいいんですよ」

そこで私は聞きました。

「じゃあ、そのときあなたはどうしてるの?」

彼女いわく。

「もちろん外国に逃げてますよ」

「ふーん、戦争してるのに外国ってどこに行くの? 敵対してる国なら、敵国の国民受け入れるわけないよね。行っても殺されるでしょう。
日本の同盟国なら、戦争で負けるわけだから、敵国に占領されて日本以上に危険な可能性がある。そもそも戦争始まる前に戒厳令が出て、外国どころかどこにも行けなくなる。戦争ってそういうことなんだって、想像できてる?」

「えっ…じゃあ、そうなる前に逃げる!」

「そうなる前って、政治にまったく興味ないんでしょ」

「まったくないです」

「どうして?」

「なんか…よくわかんないし、難しくて興味持てない。政策とかも自分に関係ないことばっかだし」

「そう。そんな政治的情報弱者が、戦争始まる前の逃げるタイミングがどうしてわかると思うの?」

「うっ…いや、そこはなんか雰囲気で」

「情弱な人が気づくくらいの雰囲気って、すでに手遅れになってるとは思わない?」

「た…たしかに…じゃあどうしたらいいんですか」


よし!


「まず投票に行きなさい」

「え、だって、入れたい人なんていませんよ!」

「あのね、投票してるわたしたちが喜んで誰かに投票してるとでも? 選挙なんてね、入れたい人に入れるんじゃない。入れたくない人を落とすために、まだマシな人に入れるものなのよ」

「マシな人なんているんですか? 政治家なんてジジババばっかじゃないですか」

50代のわたしにとって、30代、40代は若手だと感じるけど、さすが22才女子には政治家はみんなジジババに見えるわけね。

「それは若い人が選挙に行かないからよ。若い人が投票に行って、ジジババの味方をするジジババ政治家を落とせばいい。
あなたは「関係ない」って言うけど、戦争に行くのはジジババじゃない。あなたたち若い人なのよ。あなたの兄弟や恋人が戦場に行くわけ。男性だけじゃない、ノルウェーは女性も兵役義務があるの知ってた?」

「し、知らなかった」

「そういう現実よく知りもしないで「戦争すればいい」とか「国なんかなくなればいい」とか軽々しく言わないで」


彼女が真っ青になってしまったのは、ふだんアホなことばかり言ってるわたしが、珍しくマジメなことを言ったせいなのか、それとももし戦争が起こったら、自分もいやおうなく巻き添えになることにやっと気づいたせいなのか…は、わからない。次の選挙で投票に行ってくれ.ることを祈るけど。
(ちなみにノルウェーでは、2016年夏、召集された1997年生まれの兵士のうち、約3分の1が女性)。


孝蔵がラジオの収録に行こうとして止められます。雪のせいではなくて、クーデターが起こっていたからなんだけど、彼は運送屋から聞かされて知る。政治に無関心だからでもあるけれど、この時点でまだ報道されていない。孝蔵はその後、ラジオの収録に出かけたNHKで、スタジオを追い出されます。
戦争って政治にまったく興味がない人を、そうやって巻き込んでいく。いったん始まったら誰も逃れられない。孝蔵はその後、満州に渡りますが、大変な目に遭って命からがら帰国することになります。
それを知ったうえで観ているので、さらっと描かれたけど、先々を考えるとすごく怖いシーンなんです。終わりの始まりは、こうして始まる。

そんなわけで、オバサンはもちろん戦争反対だけど、若い人も誰に投票すべきか、それがわからなければ誰に投票すべきでないかを考えて選挙に行ってほしいです。

 

事実は小説よりおもしろすぎる

今回『226』以降、終戦まで、つらい回が続くでしょう。志ん生すら「笑いにならない」と言って高座を降りてしまう。

かなり覚悟して観ましたが、後半は心温まるシーンが多くてほっとしました。ラトゥール伯全力おもてなし大作戦では、ライトマン“清さん”が久々の大活躍!小梅に「最後のお勤め」って言われてたけど、50代くらい? 車夫もそろそろ引退なのでしょうか。




路地裏で子どもたちのオリンピックと出くわすとはなんという巡り合わせでしょう。『いだてん』のすごいところは、こういうエピソード=史実がふんだんにちりばめられていることです。近現代史なので、探せば資料が残っているんですね。そしてその資料に書かれている事実が小説より奇なりだったりするわけです。



大河ドラマには時代考証担当が入っていますが、しばしば空想SF設定が大ヒットしたりします。たとえば身分、境遇考えて起こる可能性が天文学的に低い篤姫と小松帯刀の恋とかね。恋愛SFストーリーやキャラゲーならアリですよ。だけど、大河でやるのは反則じゃないかと。

大河ドラマの根幹って「歴史と人間」ですよね。それなら年表の事実にはできるだけ忠実であるべきだと考えます。でないと歴史に学べないでしょう。

作家の想像力は、史実を違う角度から解釈してみるとか、記録に残っていない歴史の空白を埋めるために駆使してほしい。その意味で、プログラムにあった1行から日本泳法のエキジビションを再現するとか、名もない一市民も歴史の一部であることを示すために、架空のキャラクターを実在の人物と絡ませるといったことが効いているのが『いだてん』です。



『いだてん』を大河らしくない、朝ドラでやるようなテーマだという意見をネットで散見します。
たまたま来年は東京オリンピックですが、本作で大事なことは、現代の時間軸で「戦争と平和」について捉えなおすことです。それは過去の戦争について検証することであり、それをふまえたうえで、これからの平和について考えることです。オリンピックはわかりやすい「平和の象徴」として取り上げられているだけ。

と、いうことに、今回を観て気づきました。遅い???


【今回のとりこぼし】
まーちゃんのタバコの向きをなおし、ベルギーの国旗を手づくりする菊江さん、正々堂々と謝る治五郎さん、義理の息子にツンデレの幾江さん、なにをやっても怪しい美川など、泣き所も笑いどころも豊富。いろいろなエピソードが落語『目黒のさんま』にまとまっていく展開もおもしろく、今回は個人的に『いだてん』神回トップ3の一角を占めることは間違いありません。



あと、気になっていた写真集『日本』。実物は筑波大学に展示されてるんですね。機会があれば見てみたいなー。


第34回のサブタイトル/226

もう何度か書いていますが、わたしはショーケンのファンです。なので『いだてん』が遺作になることについて少し複雑な想いがありました。というのは、ショーケンてGS時代からずっと反体制の匂いがするんですね。1989年、豪華キャストによる大作『226』では、決起将校のひとり、野中四郎大尉を演じました。

それから30年後に、標的となった体制側の高橋是清役ですからね(野中隊が襲撃したのは警視庁ですが)。

ただ、ドラマを観ると違和感はありませんでした。オランダの木靴でまーちゃんの頭をポカッとやるアドリブとか。ショーケンはやっぱりショーケンでした。
「ダルマ」と呼ばれた人にしては細すぎると危惧していたけど、背後からとらえたショットは貫禄という丸みを帯びていていましたし。

死後出版された自伝には、奥さまのリカさんが撮影された生前最後の写真が掲載されています。




それは撮影に備えて、台本を読んでいる後ろ姿。ショーケンは病床にあっても、小さなデスクに向かってひとり稽古をしていました。そうなると家族であっても声をかけがたく、見守るのが精一杯だったとか。その日も背後からそっと撮影したそうです。

訃報が入ったとき、主要シーンは撮影が終わっているので、是清役はショーケンのままでいくというニュースが入りました。リカさんが撮影したとき読んでいたのは、おそらく今回『226』のシーンだったんじゃないかと咄嗟に思いました。

実際どうなるのかと思っていたら、ダルマの絵が血に染まって死を暗示させる描写に。
是清を殺害した中橋中尉を演じたのは、渋谷謙人。キレた感じが『戦場のメリークリスマス』の坂本龍一を彷彿とさせます。『ひよっこ』で助川時子の兄を演じたのと同一人物とは思えません。俳優の演技ってすごいなあ。



もし急逝しなければ、どうなっていたのか。暗殺のシーンは永遠に描かれることはなく、それはもしかしたら菊枝さんがいうところの「ショーケンの品格」だったのかもしれません。

さて、次回のタイトルは『民族の祭典』。まあ、これしかないことには同意します。
レニ・リーフェンシュタールの名作オリンピック映画。
ネタが尽きない『いだてん』、次回もたのしみです!


※タイトル画像キャプチャ:NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』公式サイト

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