人生は、クリエイティブ・ディレクション:50代からの「おしゃれの学校」

ID〜『いだてん〜東京オリムピック噺〜』第31回 トップ・オブ・ザ・ワールド


大河ドラマ『いだてん』ブログをお送りしています。



第31回、ロスオリンピック、日本水泳チームの快進撃が続きます。苦手としていた200メートル背泳では表彰台を独占、平泳ぎでは最年長・鶴田選手が2大会連続の金メダル。そして前畑秀子が日本女子水泳に初めてのメダルをもたらします。今週の『いだてん』に、負ける日本選手は登場しません。まさに世界の頂上を極めました。そしてロスを去る日、在米の日本人移民が現れ、まーちゃんに感謝を伝えたところ…。


<あらすじ>
1932年、田畑(阿部サダヲ)率いる日本競泳陣はロサンゼルスオリンピックで大旋風を巻き起こす。200メートル平泳ぎの前畑秀子(上白石萌歌)も空前のメダルラッシュに続こうとするが決勝レースは大混戦に。IOC会長ラトゥールは日本水泳の大躍進の秘密に強く興味を持つ。治五郎(役所広司)はその答えを見せようと日本泳法のエキシビションを思いつく。中学生のときに病気で競技をやめた田畑も、それ以来の水泳に挑戦することになる。(NHK公式サイトより)

 

マーメイドジャパンのルーツ?!

まーちゃんの「オリンピック、最高!」で始まった8月のロスオリンピック 月間。おなじく「オリンピック、最高!」で幕を閉じました。「帰りたくないなー」という気持ちが伝わってきます。実際、まーちゃんにとって1932年のロス・オリンピックは人生最高の出来事だったとなにかで読みました。

今回もいろんなことを考えさせられた回でしたが、2つのことについて書きます。
まず、日本泳法とシンクロナイズド・スイミングについて。

ロス・オリンピックのエキシビションで日本泳法を公開したのは史実だそうです。というか、たった1行の記録でここまでひろがる脚本家と演出家のイマジネーションに唸ります。


日本泳法は、もともと武術のひとつとしてうまれ、発展していったようです。ドラマで日本泳法を初めて見た外国人が「まるで白鳥のようだ」と言ったように、隊列を組み、腕やからだの動きを合わせるところって、なんだかシンクロナイズド・スイミング、じゃなかったアーティスティック・スイミング(以下AS)みたいですよね。

『ウォーター・ボーイズ』を思い出してしまったのは、わたしだけでしょうか。


ASの歴史をひもとくと、もともとは男子の競技だったので、ある意味、古式ゆかしいわけですが。

そのルーツはヨーロッパ発祥の群泳法。1900年初頭にはイギリスで「スタント・スイミング」、ドイツではアーティスティック・スイミング」が行われていました。それらが北米に渡って「ウォーター・バレエ」に変化。1934年に開催されたシカゴ万国博覧会で「シンクロナイズド・スイミング」として公開されて定着しました。

競技スポーツとしての「シンクロ」は、1946年に開催された全米選手権がはじまりといわれています。日本とシンクロのファースト・コンタクトは、1954年に来日したアメリカのシンクロチームが在日米軍のために神宮で開催した公開競技会。


ドラマで紹介されたように、日本泳法のひとつに音楽に合わせて泳ぐ能島流「楽水群像」があり、シンクロを習得しやすい素地がありました。日本泳法を教えていた水練学校が中心となって、またたくまにシンクロは全国に普及。伝来わずか3年後から日本選手権大会が開催されるようになります。


                              出典:wikipedia 葛飾北斎画:『北斎漫画』第四編(1815年文化12年))


いまもASの日本代表を多数指導している名コーチ・井村雅代さんが学んだのが「ハマスイ」こと大阪府堺市にある浜寺水練学校。わたしの小学校時代の同級生も何人か通っていました。そのうちの一人と仲よしだったので、一緒に行かないか誘われたんですが、夏休みに猛特訓があると聞き、根性なしのわたしは断ってしまいました。


その後、同級生たちは残念ながらオリンピック代表には選ばれませんでしたが、シンクロの選手は、ものすごい運動量!ものすごく食べる!なのにプロポーションは均整がとれていて、脚がきれい!ということは、彼女たちを見て気づきました。ハマスイはマナーにも厳しい学校なので、彼女たちは学級活動でもリーダーシップがある優等生で人気者でした。うーん、やっぱりわたしには向かないわ(笑)。


関西では「ハマスイ」のおかげで、シンクロはわたしが小学生だった1960年代には、そこそこメジャーだった記憶があります。公式種目として国際水泳連盟が承認したのが、そのすこし後の1973年。今回のサブタイトル“Top of the World”が世界的にヒットした年。
そしてオリンピック種目として正式に採用されたのは、「1984年の」ロス・オリンピックから!


史実によれば、アメリカのキッパス監督は、「日本のように統一されておらず各自バラバラに動いているのが敗因である。アメリカは日本の組織力に負けた」と語ったとか田畑政治「“30週年を迎えて”」『水泳』101・102号1954年8月)。

群泳にはチームワークが必要なので、治五郎さんが強さの秘密を「日本泳法にあり!」と言ったのも、あながち言い過ぎではないかもしれません。

ロスとASと日本泳法には、どこか因縁めいたものを感じます。2028年には、ロスで3度目のオリンピックが開催されます。その頃にはさらに芸術性が高まったASを見られるのではないでしょうか。

フィギュアやAS、新体操など芸術スポーツ全般を観戦するのが好きなわたしとしては速さや距離など数値で測れない競技に、とても魅力を感じます。『いだてん』が現代にも生きている日本泳法の側面にスポットを当ててくれて、うれしい。俳優さんや撮影するスタッフたさんたちは、めっちゃ大変だったみたいですが↓↓。



「日本人」とは誰か

最近、国際的に活躍する日本人選手が増えています。テニスの大坂なおみ、バスケットボールの八村塁、陸上のケンブリッジ飛鳥やサニブラウン・アブデル・ハキーム、柔道のベイカー茉秋など。

ハーフの特徴がわかりやすい外見の彼らに「純日本人」ではないといった偏見を持つ人もいます。「日本人の活躍はうれしいが、ハーフだけにうれしさも半減」というわけです。

また、彼らのようなハーフの選手がオリンピックに参加するとき、日本では22歳までにどちらかの国籍を選択するよう義務づけています。

この点について、わたしの意見はハッキリしています。本人が「日本人だ」と言えば日本人です。以上、終わり。



外見が他人にはどう見えるかとか、日本国籍なのに日本語がしゃべれないとか、そんなことは関係ありません。本人が自分をどう認識しているか。そこに尽きます。


今回のクライマックス、日本人選手の活躍に触発された日本人移民に「大道で初めて声を出して『私は日本人だ』と叫びたい」と言って、まーちゃんに感謝するシーン。

クドカン脚本のいいところは、これで終わらないで、アメリカ生まれの日系人女性に“I’m a Japanease American!”と叫ばせたことです。このあと、沿道にいた人たちが口々に「アフリカン・アメリカン」「アイリッシュ・アメリカン」と叫び始めます。

アメリカは移民の国なので、あえて「純アメリカ人」は誰かといえば、先住民族であるネイティブ・アメリカンになるでしょうか。ちなみに合衆国全人口に占めるネイティブ・アメリカンの比率は、0.9%です。

逆に言えば、イタリア系であれ、アイリッシュ系であれ、アフリカ系であれ、ヒスパニック系であれ、日系であれ、アメリカ国籍を有していれば、誰でも「純アメリカ人」です。



国の歴史や文化や伝統をないがしろにしていいと言っているのではありません。ますます国際化していく社会のなかで、国籍が個人の意志や行動を制限することになっては不幸です。国籍法は国によって異なるため、個人の力でなんとかできるものでもありません。

どんな選択をするかはあくまでプライベートな問題であり、本人の意志に委ねるものです。「純」なんて、本人の動機が純粋であれば充分というのがわたしの考えです。

トレッキー的には、「国籍:地球」でええんちゃうん、と思いますけどね。自分のアイデンティティを見つけられない人ほど、国籍や役職のような生まれつきの属性とかステイタスにこだわるのかも。


最後においしいところをかっさらっていく治五郎さん。
彼の「たわごと」は、地球的スケールの日本愛にあふれています。まーちゃんより一段高いところに登って、まだまだジジイのほうが格上と感じさせます。このときの「いやそう」な顔のまーちゃんがほほえましい。


大河っぽくないと言われる『いだてん』ですが、1部から2部にかけて活躍する治五郎さんこそ、時代の流れを感じさせる、極めて“大河っぽい”存在。せめて100歳まで生きられたら、1964年の東京オリンピック招致決定を見ることができたのに(招致決定は1958年)。

ドラマの流れ的には、そろそろ治五ロスが心配な時期にさしかかってきましたよ、う、う、う。


第31回のサブタイトル/トップ・オブ・ザ・ワールド


1973年、カーペンターズ名曲中の名曲。音痴のわたくしがカラオケで音程を外さずに歌える貴重な1曲(そんなことはどうでもいい)。


愛によって導かれたしあわせの絶頂を歌います。

びっくりしたのは、1996年に浪花花憐がこの曲を大阪弁でカバーして発表したこと。『涙の工務店』というアルバムに収録されています。
“Top of the World ”『世界のてっぺんで』、“Yesterdays Once More”は『あのエエ頃もっかい』と、オリジナルの世界観を絶妙に変換した訳詞。だいたい『涙の工務店』って、『涙の乗車券』をもじってるわけでしょう。しかも工務店って「カーペンターズ」のことかい!

さぞかしカーペンターズの純粋なファンの方は、気分を害されたことでありましょう。関西を代表して、かんにんどす(←大阪弁ではない)。



次回は『独裁者』。前回に続き、こちらもチャップリンの作品です。地球儀の風船と戯れるシーンは映画史上に残る名シーン。
ネタが尽きない『いだてん』、次回もたのしみです!


※タイトル画像キャプチャ:NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』公式サイト

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください