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潮時〜『いだてん〜東京オリムピック噺〜』第27回 替り目

大河ドラマ『いだてん』ブログをお送りしています。

第27回、第2部に入って3回目。

前半の主役だった金栗四三は最愛の兄を亡くし、人生の大きな岐路に立たされます。
熊本への帰郷を決意する四三と東京オリンピックに向かって邁進する田畑政治。

入れ替わる主役。
これからの流れを暗示する、体協での一瞬の邂逅。
物語はいよいよ東京オリンピックという目標に向かって舵を切ります。


<あらすじ>
アムステルダム五輪での水泳選手団の活躍を受け、田畑政治(阿部サダヲ)は次回ロサンゼルス大会での必勝プランを練る。同じころ、現役を引退した金栗四三(中村勘九郎)のもとに兄・実次(中村獅童)が上京し熊本に戻るよう告げるが、後進の育成の夢を抱える四三は葛藤する。水泳大国を目指す田畑の悲願だった神宮プールが完成し、そのこけら落としとなった大会で田畑は天才少女・前畑秀子(上白石萌歌)と運命の出会いを果たす。NHK公式サイトより)

 

説得の達人


実際の田畑政治がどうだったのかはわかりませんが、このドラマに関する限り、その巻き込み力は尋常ではありません。

会社の上層部を煙に巻いて朝日新聞に入社。
時の大蔵大臣・高橋是清にオリンピックの補助金を出資させるのに成功。
そして今回は体協会長の岸清一から神宮プールの建設資金を引き出します。


「口は悪いが、頭はいい」と言われるように、まーちゃんは勢いだけでなく、必ず策があります。
その策をプレゼンする相手の「メリット」に変換して伝えるのがうまい。

勝つことで国民の結束と士気を高めるとか。
「それを政治利用しなさい」とか。

スポーツマンシップに欠けようが、腹黒かろうが、プレゼンを通すために相手目線になるのは鉄則です。


死期を占ってはならない


まーちゃんは「30際で死ぬ」と、占いが趣味(?)のバーのママ・ローズに告げられます。
人を巻き込まずにはいないまーちゃんの切迫感の理由は、ひとつは30歳に死ぬと告げられたからでしょう。

占い師の人に聞いたことがあるのですが、絶対にやってはいけないことのひとつが「死期を占うこと」だそうです。
なぜなら、占いは生きることをたのしむため。
死期を知らせることは、呪いになってしまうから。

そのひとは、他人の寿命を占うと自分の寿命を縮めるとも言っていました。
恨みを買うからですかね…

ローズのママは架空の存在なので、その心配はなさそうですが。


「潮時」の本来の意味


田畑のまーちゃん編が始まりましたが、物語上でも実質的な主役の交代が描かれました。

「さよなら」

このセリフは四三の政治へ挨拶ですが、体協と東京への別れでもあります。




そして主役の実質的なバトンタッチですね。


大河ドラマは基本ネタバレなので書きますが、四三の人生はこれからも熊本で続きます。

ドラマがどこまで描くかわかりませんが、四三は1983年に92歳まで生きます。
ローズのママに「30歳で死ぬ」と予言されたまーちゃんはその翌年の1984年、85歳没。

なんらかの形でふたりが交錯するシーンが描かれる気がしますが、それは先のたのしみとしてとっておきましょう。


別れというともうひとつ、四三の兄・実次との死別も描かれました。


勘九郎さんもそうなのですが、獅童さんも歌舞伎役者です。
歌舞伎のひとって、なんかこう佇まいがちがうんですよね。

とくに「ここ一番!」みたいなところでの自分の押し出し方の迫力が。
獅童さんは、三谷幸喜さんの舞台『江戸は燃えているか』で勝海舟を演じました。

コメディですが、腕組みして立っているだけで絵になるというか、様式美が板についてるんですよねぇ。
前回、人見絹枝さんを演じた菅原小春さんや今回河西三省役に抜擢されたトータス松本さんのように、役者でない人ならではの唯一無二の存在感もすばらしい。

でも、演じるためにうまれてきた家の伝統を受け継ぐ人たちもすばらしい。

いろんな演技の幅をたのしめるのも『いだてん』です。



さて、「潮時」と口にした四三。
潮時を「引き際」とか、アスリートの場合は「引退」と受け止める人、多いですよね。

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第27回「替り目」ご覧いただきありがとうございます。 「お手合わせば、お願いいたす!」 「東京で会うとは何年ぶりかね」「ストックホルムの旅費ば届けに来た時だけん、17年前ばい」 「みんな言ってら。あんな美人な女房、泣かしちゃいけないよって、わかってますよ…」 「やってくれたな君!」 「元祖オリンピックは三千世界広しといえども、金栗四三ただ一人だ」 * #いだてん #替り目 #金栗四三 #中村勘九郎 #嘉納治五郎 #役所広司 #おりん #夏帆 #前畑秀子 #上白石萌歌 #金栗実次 #中村獅童

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「潮時」って誤解されやすい言葉なんですよね。

【潮時】
 潮の満ちる時、また、引く時。
 物事を始めたり終えたりするのに、適当な時機。好機。「潮時を待つ」「ピッチャー交代の潮時
 時間。特に、一日のうちで出産や死亡の多く起こる時間。潮の干満の時刻に合わせて起こるからという。
[補説]2について、文化庁が発表した平成24年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「ちょうどいい時期」で使う人が60.0パーセント、本来の意味ではない「ものごとの終わり」で使う人が36.1パーセントという結果が出ている。
コトバンク(デジタル大辞泉より)


本来、「好機」「チャンス」ととらえるべき言葉なんです。




ものごとの終わりは始まりでもある。
「潮時」はまさに「替り目」でした。



【今回のタイトル:替り目】

クドカンの落語好きは有名です。
志ん生が語り部であることから、『いだてん』は大河ドラマの形式を借りた“噺”であることに、熱心なファンはとっくに気がついています。

それがとくに際立って描かれたのが今回でした。
もちろん、落語の『替り目』を聞いたことがなくてもおもしろい。
でも、知っているともっとニンマリする。

知るとおもしろくなるのはドラマだけではないんです。
元ネタの味わいも深くなる。

再解釈ができて、再入門になるんです。
芸術は「わかった気」になったらおしまいです。
とくに古典は何度でも、いろんな角度で学べる。

「わかりやすくシンプルなもの」が好まれる現代の風潮とじつに逆行している。
昨今の教養ブームは、時代の主流への反動です。
わたしは好きですけど。

で、今回のお題はこれ↓。



この落語のおもしろみをイマイチ伝えにくいのです。
「調子の変わり目」と「銚子」を引っ掛けているだけのサゲは、「なんだよ、ただのダジャレかよ」というがっかり感が漂うのですが、名人の落語を聞くとおもしろいんですよ、やっぱり。

そして同じネタでも志ん生と志ん朝と枝雀とでは味わいが違う。

演じる人が違えば、解釈が異なり、キャラクターが異なる。
この作品は、噺家の語り口を楽しむ作品なんだとおもいます。

そのせいかダジャレのサゲまでいかないで、途中で切ってしまう噺家もいます。
そこがまさに女房がいないと思って褒めた本音を立ち聞きされてバツが悪くなるというところ。

志ん生の『替り目』は、まさにこのパターンなんです。

ドラマの孝蔵の語りは、『替り目』のワンシーンそのものなんです。
そして、まーちゃんが四三を褒めたところを本人が立ち聞きするラストシーン。


今回は45分まるごと『替り目』だったんですよね。
なんとまあ手の込んだことを仕掛ける『いだてん』です。



来週は選挙特番のため、おやすみ。
次回の放送は7月28日です。


※タイトル画像キャプチャ:NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』公式サイト

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