【映画検定?】問1

カルロス・サウラ、サリー・ポッター、ヴィム・ヴェンダース。

ヨーロッパを代表する3人の映画監督に共通するキーワードをあげなさい。

 

いきなりオタク問題ですいません。

答えはもうおわかりですね。

そう、「アルゼンチン・タンゴ」です。

(注:「タンゴ」でも正解とします)

 

 

3人ともアルゼンチン・タンゴをモチーフにした映画をつくってるんですね。

カルロス・サウラはスペイン人、サリー・ポッターはイギリス人。

そして本作の製作総指揮ヴィム・ヴェンダースはドイツ人です。

 

3人ともクセのある芸術的な作品の名手です。

しかも個性がまったく違います。

なのに、その3人を虜にしてしまう…

そこにタンゴの魅力の底知れぬ奥深さを感じます。

 

それだけに3人がつくった作品も、おなじアルゼンチン・タンゴを素材にしながら、まったく異なる香りを放っています。

いずれもタンゴの本質に迫る野心作です。

 

ものすごく乱暴に、それぞれをまとめます。

サウラはダンスとしてのタンゴの美に迫ろうとしました。

ポッターは自身の経験を通して、タンゴの官能性を視覚化しようとしました。

そして、ヴェンダースは、タンゴを踊る人間そのものを、監督へルマン・クラルの“眼”を通して描こうとしました。

 

この3作にはほかにもおもしろい共通点があります。

サウラの『タンゴ』には、ファン・カルロス・コペスが出演しています。

そしてサリー・ポッターの『タンゴ・レッスン』には、パブロ・ベロン(上の写真の男性)が出演しています。

『ラスト・タンゴ』には、そのふたりとも出てるんです。

 

単にアルゼンチン・タンゴの世界が狭いということなのかもしれませんが。

一方で、3人の監督が感じているタンゴの魅力に、なにか共通するものがあるのかもしれません。

それはなにか。

 

タンゴはとても濃密なダンスです。

カラダが密着したり、脚を絡ませたり、アクロバティックなピクチャーポーズがセクシーなのはたしかですが、タンゴをタンゴたらしめているのは、腰よりも脚よりも、まず視線が絡みついて踊りがはじまるところです。

 

タンゴはとても男性優位の踊りです。

 

ダンスフロアでは男性が女性を誘い、ペアが成立しなければ踊れません。

女性は誘いを断ることはできますが、男性を誘うのはマナー違反なんですね。

 

では女性は想い人を誘えないのかというとそうではありません。

意中のひとは眼で誘うんですね。

 

「わたしを見て!

あなたのパートナーがここにいるわよ!」

 

それを言葉にはしない。

眼で伝えるんです。

 

「視線に気づいて男性があなたの手をとれば、あなたの勝ち。

女性が視線で引き寄せるところから踊りが始まる。

ぼくはタンゴは女性からはじまる踊りだと思うんだ」

 

わたしがタンゴを習っていたとき、アルゼンチン人の先生から学んだいちばん大事な教えはこれだったといまでも思います。

 

YouTube Preview Image 

 

映画のなかで、若いファンがマリアを誘うシーンがあります(予告編の0:25ごろ)。 

ファンが誘う前から、マリアは彼を見つめています。

タンゴはこの瞬間から始まってるんですよ。

 

その後、ファンとマリアの心がすれ違うようになると、視線が合わなくなります。

それが写真にも残ってる。

それでも彼らはプロなので、日本でみごとな踊りを披露します。

公演を観ましたが、まさかその後、ほどなくペアを解消するとは思いもしませんでした。

 

ダンスでなくても、コミュニケーションはまず、視線を合わせるところから始まります。

カップルで踊るダンスはアルゼンチン・タンゴ以外にもたくさんありますが、視線が果たす役割がとりわけ多いのがタンゴです。

相手の眼をまともに見られなくなると、タンゴは魅力を失います。

視線にふたりの人間関係が凝縮されているからです。

 

昔からプロのタンゴダンスのペアには恋人どうしや夫婦が多いといわれています。

それだけに実生活の別れが、そのままダンスパートナーとしての決別になることも少なくありません。

 

マリアが失ったのは、人生のパートナー。

ファンが失ったのは、ダンスパートナー。

 

どちらかを失うことは、どちらも失うこと。

彼らの人生が交わることはもう二度とないのかもしれませんが、現在のふたりの視線が絡むシーンを見られたのは、映画という幸福な奇跡のおかげでした。

 

 

85分と意外に短いですが、アルゼンチン・タンゴの名曲そのもののように、なんとも言いがたい複雑な味わいがあります。

 

では、本日もアドバンストなミロンガを。

 

 

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miyuqui yamada

講師、講演家、コンサルタントなど人前に立つ人の外見と内面を装いでイメージアップする専門家。 34年間クリエイティブ業界において、アパレル、化粧品、流通大手企業をクライアントに、広告制作・販促・編集企画のディレクターとして、数百回のプレゼンと2500名以上の成功者の取材・寄稿に関わり、「勝つ人」「成功する人」の外見に興味を持つ。92〜95年、外資系化粧品会社にて2000名以上の女性にメイクとファッションのセミナーを実施。2014年STYLE&PLAN設立。自身のプレゼン、講師経験をもとに衣装を担当したクライアントがセミナー講師コンテスト入賞・優勝を続々と果たす。その勝率は8割。「セミナー講師、服装」の検索においてはGoogle検索1位。