声の調子や目や表情には、言葉の選び方に劣らぬ豊かな雄弁がある。

―ラ・ロシュフコー(『箴言と考察』より)

 

こんにちは。
ファッション・プランナー/スタイリング・カウンセラー®のやまだみゆきです。

 

いよいよ引越が迫ってきました。

そこで積年の疑問を晴らしておくことにしました。

 

近所にコンビニがあるのですが、気になるのは、そこのバイトのおにいさんです。

ちょっと涼しげな和顔。

残念ながらいつも制服なので、ファションセンスはわかりません。

彼のどこがすばらしいかというと。

「いらっしゃいませ」

「364円になります」

「404円お預かりします」

「40円とレシートのお返しです。ありがとうございました」

 

どうです、うっとりするでしょう?

・・・って、わからないか。

わからないよね。

 

1)発音が明瞭で美しい。

2)とにかく所作が美しい。

 

わたしは前からとても不思議でした。

彼はあきらかにほかのスタッフ、というよりこれまで接客してもらったことのあるどのコンビニのスタッフとも違っていることが。

もうね、たいせつなものをさし出されている感じ。

 

待機姿勢が揺れない。

レシートを渡すとき、手首を返す。

指は揃え、必ず両手を添える。

 

むしろ一流ホテルとかインポートブランドの旗艦店とか三ツ星レストランとか。

コンビニより、そういうところにいそうなタイプです。

まだ若いからマネジャーではないけど、幹部候補生、みたいな。

 

それとも容貌からいって、能とか日舞をやってるとか。

じつは茶道の師範とか。

妄想はふくらむ・・・(笑)

 

Pezibear / Pixabay

 

そこで、思い切って聞いてみたんですよ。

前からずっと思ってたんだけど、所作や発語が美しいのね。

なにかやってらっしゃるんですか、って。

彼は一瞬びっくりしてたけど、笑って、すぐに答えてくれました。

 

「じつは・・・

俳優の養成学校に通っていて、先生から日頃の言葉や所作に気をつけなさいと言われてるんです」

俳優!そうきたか!

「それだけです」

なるほどねぇ、あきらかに違うもの。

「・・・うれしいです」

 

素直に喜んでいただけて、わたしもうれしくなりました。

俳優の勉強がんばってね、と言って店を出ました。

いつか彼が有名になるといいなぁ・・・

 

コンビニでもスーパーでもレジでの接客なんて、ほんの数秒。

しかもマニュアルがあって、言うべきことはほぼ決まっています。

それでも、話しかたや所作が美しいと、誰がやっても同じ会話なのに相手に与える印象がまったく違うんですよね。

 

それで思い出したことが・・・

 

Sarah_Bernhardt_by_Paul_Nadar_(crop)

出典:ja.wikipedia.org Portrait of actress Sarah Bernhardt (1844-1923) by Paul Nadar (1856-1939), crop パブリック・ドメイン  撮影:1878年頃

 

女優のサラ・ベルナールは、レストランのメニューを読み上げるだけで。

その名が英国の演劇賞にもなっているローレンス・オリヴィエは、ロンドンの電話帳1ページを読むだけで。

客を泣かせることができたとか。

 

フランス人がメニュー、イギリス人が電話帳というモチーフの差が国民性を現していておもしろい。

果たして、メニューや電話帳を読み上げるだけで、ほんとうにひとを感動させることができるのか。

それができるのが俳優の芸の力だ、みたいなことを随筆に書いていたのは伊丹十三さんだったと思います。

 

サラ・ベルナールにしても、オリヴィエにしても、歴史的な名優ですから、その偉業を讃えるために、史実にちょっと尾ひれがついたというか、ぶっちゃけ都市伝説じゃないのかなとちょっと疑っていたんだけれど。

コンビニのおにいさんのおかげで、認識を新たにした次第。

 

たとえコンビニのユニフォームを着ていても、振る舞いが一流ホテルの黒服なら目立つ。

言い換えれば、どんなに美しく装っても、振る舞いで台なしになることもあるわけです。 

メニューや電話帳を朗読することはないとしても、立ち居振る舞いを見てガッカリ、にはならないように。

 

だいじなメッセージをいただいて、旧居をあとにすることになりました。

あすはいよいよ引越です。

 

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miyuqui yamada

講師、講演家、コンサルタントなど人前に立つ人の外見と内面を装いでイメージアップする専門家。 34年間クリエイティブ業界において、アパレル、化粧品、流通大手企業をクライアントに、広告制作・販促・編集企画のディレクターとして、数百回のプレゼンと2500名以上の成功者の取材・寄稿に関わり、「勝つ人」「成功する人」の外見に興味を持つ。92〜95年、外資系化粧品会社にて2000名以上の女性にメイクとファッションのセミナーを実施。2014年STYLE&PLAN設立。自身のプレゼン、講師経験をもとに衣装を担当したクライアントがセミナー講師コンテスト入賞・優勝を続々と果たす。その勝率は8割。「セミナー講師、服装」の検索においてはGoogle検索1位。