フライヤー画像出典:美術館「えき」

 

安西水丸さんに京都でイラストを習っていた頃のこと

安西水丸さんが亡くなって、もう2年なんですね。

きょうは単なる想い出話なので、あまり実のあるネタはありません。

“ファンから見たカリスマ”みたいな話です。

 

ちょっと自慢しますが(またかよ)、わたくし、水丸さんにイラストを習っていたことがあります。

正確には、水丸さんがメンバーだった「パレットクラブ」のイラスト教室に通っていたのです。

 

1980年代の半ばくらい。

場所は、京都のインターナショナルアカデミー。

先生は安西水丸・原田治・ペーター佐藤・新谷雅弘の4氏。

めちゃめちゃ豪華なメンバーでしょ。

 

こんなすごいひとたちが、なんでわざわざ京都でイラスト教室をやったのか。

みんな京都が好きなので、これで毎月京都に来る口実ができてうれしい的なリップサービスとも本音ともつかない挨拶があったような、なかったような。

いや、細かいことは忘れちゃいましたが。

 

わたしの参加理由は、イラストレーターをめざしてというより、クリエイティブ・ディレクターとしてイラストをディレクションできるひとになりたかった。

・・・と、いうのは大義名分で、ペーター佐藤さんの大ファンだったのでした。 

 

ミーハーですみません。

 

しかしですね。

新谷雅弘さんは、『POP-EYE』『an-an』のアートディレクションにかかわってこられ、詩の雑誌『鳩よ!』が注目されていました。

そして、水丸さんは電通出身。

アートディレクターからイラストレーターに転身されています。

だから、わたしが学ぼうとしていることについて、ドンピシャな先生方だったことも確かなのです。

 

描くときは一発勝負

とはいえ、イラストの教室だったわりには、イラストのテクニックがどうこうより、イラストレーターとしてどう作品づくりに取り組むかとか。

クリエイターとしてどう生きるかみたいな話が中心だった気がします。

 

実際、著名な講師に習うときは、受講生もそういう部分を見たほうがいいですよね。

 

水丸さんについていちばん「すごい!」と思ったのは、「描き直しをしない」ことでした。

描くときはつねに一発勝負なんだそうです。

 

今回展示されてますが、和田誠さんとの共作シリーズがあります。

『AD-LIB展』というスペースユイで開催されていたコラボ展覧会のための作品です。

和田さんと水丸さんが左右に1点ずつ、おなじテーマのイラストを描いてひとつの作品に仕上げます。

 

先に描くひとは左に描く(当然ですよね、右利きだから)。

後から描いたひとがもし描き損じたら、先に描いた方もやり直しです。

なんて恐ろしいことするんだろう、と思ってましたが、さすがに一度も描き直しはなかったそうです。

 

ふたりともプロだなー。

 

1点だけ、右側があいた作品が展示されていました。

なぜだか未完のまま保存されていたらしいのですね。

 

わたしたちの人生は未完の作品に似ています。

右側があいていて、そこにはこれからなにかが描かれる。

 

水丸さんの急逝は、ぽっかりと右側があいた作品そのもののようで、しばしその絵の前から動けなくなってしまいました。 

 

 「ヘタウマ」ではない?

授業で覚えていることがあります。

80年代なかばというと。

いわゆるヘタウマがイラストレーションのメインストリームで、教室の課題もそれっぽい絵を提出するひとが多かったんです。

水丸さんは、ヘタウマの代表みたいにいわれていました。

でも、個人的にはちょっと違和感があったんです。

 

水丸さんと村上春樹の協業は有名ですね。

その第1作がこのスクール前年に発表された『中国行きのスロウボート』。

 

わたしはよく本をジャケ買いするけれど、これもそうでした。

 

みうらじゅん、湯村輝彦など代表的な「ヘタウマ」作家は、よくも悪くもクセの強さが味わいに感じられる作風のものが多いです。

水丸さんの作品には色や線を極限まで排除した、いわば俳句をイラストにしたような洗練と都会的な静謐さがありました。

このカバーは、これまで水丸さんの特徴といわれてきた線すらも排除した、いわばシンプルの極みです。

 

「(簡素なタッチにたどり着いたのは、フリーになって)仕事をたくさん受けてしまったとき、シンプルな画風でなければ量をこなせないないから」

 

だいたいこういう意味のことをおっしゃいました。

そんな戦略的な意図だったのか・・・

なんだかディレクターっぽい発想で、妙に感心した覚えがあります。

 

いろんな顔をもっていたけど、やっぱり“イラストレーター” 

水丸さん、受講生からは、とても人気がありました。

とくに女生徒からはダントツのモテモテぶりでした。

飲み会に行くと、水丸さんには近寄れないんです。

がーーーっと女生徒に包囲されていて(笑)。

 

わたしはディレクター志望だったこともあって、新谷雅弘さんとお話することが多かったです(ペーターさんはあまり飲み会にいらっしゃいませんでした。泣)。

そのときにも「水丸さんはどこに行ってもモテモテなんだよねー」と伺いました。

そういえば村上春樹のエッセイにも同じことが書かれているので、「水丸さんはモテる!」は揺るぎない事実のようです。

 

わたしが見たところ、水丸さんのモテぶりはどこか天然でした。

黙っていても、女性のほうから寄ってくるタイプです。

もちろんカッコいいんですけど、いわゆるイケメンとはちょっと違う。

女性に対するバリアみたいなものがなく、オープンに話ができるのは、いま考えれば7人きょうだいの末っ子だったことと関係あるのかもしれません。

 

とはいえ絵から連想されるような「癒し系」ではなく、いい意味で4人のなかではいちばん厳しい先生でした。

とても多才な方でしたが、ご自身のことは「イラストレーター」とおっしゃっていました。

 

イラストレーターをめざしておられた頃も、イラストレーターになって文筆や文化人的な活動をされてるときも、つねに“イラスト”が中心にあったんだと思います。

 

この作品展も『イラストレーター 安西水丸展』。

 

ひるがえって自分自身をひとことで表現するなら、どうするかな。

それを問いかけられているかのようでもありました。

 

 

では、本日もアドバンストな一日を。

 

The following two tabs change content below.

miyuqui yamada

講師、講演家、コンサルタントなど人前に立つ人の外見と内面を装いでイメージアップする専門家。 34年間クリエイティブ業界において、アパレル、化粧品、流通大手企業をクライアントに、広告制作・販促・編集企画のディレクターとして、数百回のプレゼンと2500名以上の成功者の取材・寄稿に関わり、「勝つ人」「成功する人」の外見に興味を持つ。92〜95年、外資系化粧品会社にて2000名以上の女性にメイクとファッションのセミナーを実施。2014年STYLE&PLAN設立。自身のプレゼン、講師経験をもとに衣装を担当したクライアントがセミナー講師コンテスト入賞・優勝を続々と果たす。その勝率は8割。「セミナー講師、服装」の検索においてはGoogle検索1位。