パワーポイントは危険だ。

理解したという幻想、制御できるという幻想を生みだすものだ。

—ノリーナ・ハーツ(『情報を捨てるセンス  選ぶ技術』より)

 

こんにちは。

アドバンスト・スタイリストのやまだみゆきです。

 

プレゼンやセミナーで必須のパワーポイント。

わたくし、スタイリストとしては異色のクリエイター出身なので、“スタイリング”するのは“人”だけではなく、その人が“つくるもの”も範疇です。

 

すばらしいセミナーをする講師の装いが残念だったらガッカリですが、素敵なファッションの講師のスライドが残念だったら相当ガッカリですよね。

 

MS Pゴシックで作ったスライド。ここまで単調でなくても文字だらけの人は多い。

 

きょうはちょっと視点を変えて、プレゼンスライドに関するお話。

パワーポイントを初めて使う方は、先輩から

「MS Pゴシックを使うな」

と言われたかもしれません。

 

MS Pゴシックは、パワーポイントに限らず、マイクロソフトofficeシリーズのデフォルト書体。

なのに、どうして使ってはいけないか、はっきりした理由は説明してもらえましたか。

 

「スライドの表示には向かないから」と言われたらいいほうです。

 

一方で、グラフィックや編集など印刷物にかかわってきて、web系の知識もある程度持っているような、きちんと理由を説明できるひとなら、ちょっとめんどくさいので、説明を省いちゃった可能性が。

 

MS Pゴシックは、まだパソコンの解像度が低かった時代、性能の悪いディスプレイでも
「間違いなく読める」ことを大前提に開発されました。

多少ガタガタでも判読できること。

これが第一だったわけです。

ですから文字の美しさにはウェイトが置かれていません。

 

そこのところ、AppleがMacに使用する書体を、美しさにこだわって開発してきたことと
対照的です。

 

ちょっと見ていただきたいのですが(「うのこういちろう」を知らない方は検索してください)、「う」と「の」が他の文字に比べて太い。

「い」も微妙に太いでしょ。

ヒラギノ(※Macに標準搭載の書体)は圧巻の“等幅”です。

小さな違いだけど、違いに気づいたらもう使えない。ヒラギノはMac OS X、iOS標準搭載。

 

もう一人、この方。

「こ」の上側がまっすぐですよね。

「た」や「に」と比べると明からで、ヒラギノと比べるとさらによくわかります。

MS Pゴシックの「こ」は他の文字に比べて直線的。「た」「に」の下の部分も法則性がない。

 

ディスプレイ上の可読性を最優先して開発されたために、書体全体の統一感が薄いことが、MS Pゴシックの弱点です。

それは、文字をカタマリとして見たとき、イメージを伝えにくいという難点に変わります。

 

もう一度、MS Pゴシック。“P”は“プロポ—ショナル”の略。本来、文字は“き”“ょ”などそれぞれに横幅が異なるもの。横幅はすべて均等に全角のMSゴシックを、文字ごとに適切な横幅に調整したのがMS Pゴシック。そのためMS Pゴシックは行末がまっすぐ揃わない。

プロポーショナル書体でなければ、タテ・ヨコ揃った、いわゆる“箱組み”ができるが、字間と禁則処理による行末のアキなどパラパラした空白が目について、締まりのない画面になる。

スライド5

Windows 7 から標準のフォントとして使われている「メイリオ」。“明瞭”をもじったネーミングだけあって読みやすく、とくにヨコ組に強い。

手描き風の文字で全体を構成することはまずないでしょうが、特殊な書体は、内容によって「アクセント」に使うと効果抜群。このリラックス感はほかの書体には絶対に出せない。

やさしい、やわらかい感じは丸ゴならでは。

わたしがよく使う、新ゴ。タテ・ヨコがバシッと揃った美しい組み。

 

元気さ、明るさ、軽快さを伝えたいのか、重みや深みが必要なのか、コンテンツと書体のイメージもリンクさせておくと、受講生はスムーズにセミナーに入っていけます。

MS Pゴシックは文字ごとの統一感が薄いために、世界観を表現しにくい書体なんです。

また、プロポーショナル書体なので、文字組みをしたとき、行末が揃いません。

MSゴシックにすれば行末は揃いますが、今度は字間が気になります。

そんなわけで、MS Pゴシックはいろいろな意味で中途半端であることが、スライドの美観にこだわるひとに不評なのです。

 

以上、「使うな」といわれる背景でした。

 

美しさより利便性を優先させる人、それはそれで味わいを感じる人は、弱点・難点も知ったうえでお使いください。

それしか知らないから。

標準装備だから。

 

なんの疑問も感じないのは、スライドをつくる立場として関心できません。

わたしがスライドにMS Pゴシックを使わないのは、文字にこだわりがあるから。

おなじように使わない人のスライドを見たら、心のなかで

同志よ!

と思いながら、話を聞きます。

 

とはいえ、MS Pゴシックが必要な状況、場面はいろいろあります。

とくにエクセルやワードで複数で共有する書類をつくるとき、MS Pゴシック以外だと
文字化けの危険性があります。

webデザインだとキャプションなど小さい文字に使うひともいる。

小さくても潰れにくいので。

 

そうそう、文字化けというと、プレゼンスライドで特殊書体を使ったら、注意が必要です。

Macで作ったけど、会場のPCがWinだった場合も要注意。

 

あらかじめMac×Winで互換性のあるフォントを選ぶ、あるいはデフォルトではない書体は画像にしておく、自分のパソコンを持ち込んで使用するなど、対策をしておきましょう。

 

美しさにこだわるということは、ひと手間かかるやりかた、生きかたです。

でも、そのひと手間がほかとの違いを際立たせている。

わたしはそう信じてます。

 

では、本日もアドバンストな一日を。

 

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miyuqui yamada

講師、講演家、コンサルタントなど人前に立つ人の外見と内面を装いでイメージアップする専門家。 34年間クリエイティブ業界において、アパレル、化粧品、流通大手企業をクライアントに、広告制作・販促・編集企画のディレクターとして、数百回のプレゼンと2500名以上の成功者の取材・寄稿に関わり、「勝つ人」「成功する人」の外見に興味を持つ。92〜95年、外資系化粧品会社にて2000名以上の女性にメイクとファッションのセミナーを実施。2014年STYLE&PLAN設立。自身のプレゼン、講師経験をもとに衣装を担当したクライアントがセミナー講師コンテスト入賞・優勝を続々と果たす。その勝率は8割。「セミナー講師、服装」の検索においてはGoogle検索1位。