流行には死後の復讐のようなものがあり、過去の突飛なものでさえ、いつか魅力を持つ。


しかし、我々の仕事は束の間の仕事である。


—クリスチャン・ディオール(回想録『一流デザイナーになるまで』より)

 

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ディオールとラフ・シモンズ

ラフ・シモンズのディオール就任はビッグニュースだったし、いったいどんなコレクションになるんだろうと興味津々でした。

前任はジョン・ガリアーノ。

豪華絢爛、いい意味で過剰なそのイメージはラフ・シモンズのミニマリズムの極地ともいえる世界観とはまさに正反対。

 

YouTube Preview Image

 

果たしてそのコレクションは、ディオールのシグニチャーといえるシルエットやディティール、ロマンチシズムを感じさせながらも、シモンズが愛する現代アートの香りを漂わせた、とてもモダンな作品に仕上がっていました。

 

そんなふうにコレクションの大成功を知った上で、いわばネタバレを承知でいてもなお、この映画は、ドキュメンタリーを超えた魅力に溢れています。

 

ディオールとお針子さんたち

ひとつは、ある種のサスペンス的なおもしろさ。

コレクションの準備期間が短かったことは聞いていましたが、たった8週間しかなかったとは!

プロジェクト・ランウェイ並みの無茶振りをいったい彼らはどうやって解決したのか・・・

実際、プロジェクト・ランウェイ並みに「これでもか!」と“ひねり”や“サプライズ”が起こります。

 

もうひとつは、これまで公開されなかったアトリエにカメラが持ち込まれたことです。

そこは華やかなランウェイと違い、地味で気が遠くなるような手作業の繰り返し。

“服づくり”というより、工芸作品や芸術作品の制作現場のよう。

職人さんたちの誇り高いクラフトマンシップに圧倒されます。

 

ディオールとメゾン

さらに、プロジェクトの完遂にあたって、組織はいかに機能するかを描いた、チームビルディングの物語としての側面です。

これはもう業界を超えて、考えさせられる点が多い。

リーダーであるラフ・シモンズの孤独、調整役であるピーター・ミュリエの存在。

そしてひと癖もふた癖もある職人チーム。

 

メゾンにはベルナール・ビュッフェが描いた
ディオールの肖像画があって、シモンズが眺めているシーンが出てきます。


映画好きのかたなら、ヒッチコックの名作『レベッカ』を思い出すかもしれません。

ディオールがかつて感じていたプレッシャーを、時代を超えていま、ラフ・シモンズが感じている・・・

とても印象深いシーンです。

 

 

一方でこのシーンは、ムッシュ・ディオールがわが帝国を見下ろしているようにも見えるんですね。

職人さんたちもその視線を意識しているからこそ、「ムッシュ・ディオールに恥じない仕事をしたい」と言うのでしょう。

この想いが、チームをひとつにまとめていきます。

 

ファッション・ドキュメンタリーという枠を超え、“ディオール”というブランドについて、オート・クチュールやモードのありかたについて、いろいろな視点を提供してくれます。

そこがまた、最近たてつづけに公開されたサンローランや何度も映像化が行なわれているシャネルとのスタンスの違いを見せてくれます。

 

Unknown

 

※参考資料: 「一流デザイナーになるまで」 著:クリスチャン・ディオール

人間としての成長や変化を描く フレデリック・チェン監督に聞く(Sankei Biz)

ラフ・シモンズの知られざる一面を引き出した映画『ディオールと私』(AFP)

「ディオールと私」公式サイト

 

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miyuqui yamada

講師、講演家、コンサルタントなど人前に立つ人の外見と内面を装いでイメージアップする専門家。 34年間クリエイティブ業界において、アパレル、化粧品、流通大手企業をクライアントに、広告制作・販促・編集企画のディレクターとして、数百回のプレゼンと2500名以上の成功者の取材・寄稿に関わり、「勝つ人」「成功する人」の外見に興味を持つ。92〜95年、外資系化粧品会社にて2000名以上の女性にメイクとファッションのセミナーを実施。2014年STYLE&PLAN設立。自身のプレゼン、講師経験をもとに衣装を担当したクライアントがセミナー講師コンテスト入賞・優勝を続々と果たす。その勝率は8割。「セミナー講師、服装」の検索においてはGoogle検索1位。