ビューティー・キャンプというのは、ミス・ユニバース・ジャパンの代表選考会に出場するファイナリストの強化合宿のこと。

なんかきれいな感じですが、米俗語のboot camp(ブート・キャンプ=新兵訓練、軍隊式トレーニング)のモジリなんですね。

だから超スパルタです。

 

小説はこの合宿前から代表選考会でミス・ユニバース・ジャパンが決まるまでを描いています。

書籍の帯や広告には、ドロドロした愛憎・人間関係的なことが書いてありますが、あんまりそっち寄りの内容はありません。

林真理子さんの文体はあっさりしていて、メロドラマじゃなく、むしろドキュメンタリータッチ。

 

ええ、もちろんフィクションですけど。

 

エンターテインメントとしての小説は、おそらく事実と虚構の境目にあるのが、おもしろいんです。

林真理子さんは、実際にミス・ユニバース・ジャパンの事務局に取材し、日本代表の選考会やラスベガスの大会まで足を運んだそうです。

特定のモデルがいるわけではなく、取材の過程で知り得た情報から複数の人物像をひとりのキャラクターとした・・・らしいのですが。

 

エルザ・コーエンは、イネス・リグロンがモデルに決まってます。

 

 

いったいどこまでがイネスの実像で、どこからが作家のフィクションかはわかりません。

実際にイネスが著書で紹介しているエピソード(ラッシュアワーの新宿駅山手線外回りホームにファイナリストたちを連れていき、あの電車に乗る側になるか、リムジンに乗る側になるかを話すところなど)も散見されるので、取材以外にも関連書籍を相当読み込んでおられることがわかります。

 

この本の中でも比喩として出てくる『プラダを着た悪魔』という小説とそれをもとにした映画があります。

鬼編集長とアシスタント。

まあ、ふつうは主役のアシスタント視点で読んだり観たりしますよね。

なので、ガッツはあるけど垢抜けない若い女の子が洗練された女性に成長するサクセスストーリーとして認識されます。

この作品も、トップディレクターであるエルザの通訳兼アシスタントの由季の視点で読むのがふつうです。

主人公ですから。

ファイナリストならカレンを応援したいとか、桃花に共感するとか、美優にがんばってほしいとか、そういう見かたもあると思う。

 

だけど、『プラダ・・・』でキャラ立ちしてるのは、主役のアンディより圧倒的に上司のミランダなんですよね。

『ビューティーキャンプ』では(「わたしは『プラダを着た悪魔』よりすごいかもよ」と言う)エルザです。

 

そっち視点で観る(読む)ほうが断然おもしろい。

なんたって、いちばん責任が重くて、いちばん大変だけど、いちばんコントロールできる実権を握っているポジションだから。

ピンハネしたり、公私混同したりなんて、正直、瑣末です。

どうでもいい。

彼女たちは自分のミッションがわかっていて、それに忠実なだけですね。

彼女たちのミッション、エルザの場合は

 

「日本代表を世界一の美女にする」

 

それだけです。

そのためには、まさに手段を選ばない。

最後に大逆転があるのですが、これもおそらく計算尽くだったのではという気がします。

すくなくともそう読ませる、林真理子さんの筆致でした。

 

この本のテーマは、長年、美女に固執してきた、林真理子さんならでは。

ミス・ユニバースなんて別世界の話、並外れた美貌なんて他人事—としか考えない人が、“美を不当に貶めている”こと、気づいていない。

人は見た目に騙されやすいのに、それを認めるのは知性がないと思ってしまう傾向があります。

でも、その知性にもじつはあまり自信がなかったりするわけだけど・・・

知性は本人の努力次第であって、美貌は天からの幸運なギフト。

その幸運に恵まれなかった不公平感を、幸運な人の足を引っ張る形で埋め合わせをしている。

 

それでもなお、人は美しさに囚われてしまうこと。

天然の美に恵まれても、それを放置していては“魅力”につなげられないこと。

“美”は“魅力”という宇宙のひとつの惑星にすぎないこと。

誰にでも美しくなれる可能性があること(そのレベルには個人差があるとしても)。

 

「あなたは醜い」と言われたテレビクルーのユリが、2年後どんな美女になるでしょうか。

小説ではそこまで描かれていないけれど、彼女は自分だけのビューティーキャンプ・プログラムで、これらの答えを見つけるでしょう。

 

では、本日もアドバンストな一日を。

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miyuqui yamada

講師、講演家、コンサルタントなど人前に立つ人の外見と内面を装いでイメージアップする専門家。 34年間クリエイティブ業界において、アパレル、化粧品、流通大手企業をクライアントに、広告制作・販促・編集企画のディレクターとして、数百回のプレゼンと2500名以上の成功者の取材・寄稿に関わり、「勝つ人」「成功する人」の外見に興味を持つ。92〜95年、外資系化粧品会社にて2000名以上の女性にメイクとファッションのセミナーを実施。2014年STYLE&PLAN設立。自身のプレゼン、講師経験をもとに衣装を担当したクライアントがセミナー講師コンテスト入賞・優勝を続々と果たす。その勝率は8割。「セミナー講師、服装」の検索においてはGoogle検索1位。