私は苦しんでいません。 
闘っているのです。 
世界の一部であろうとして、
自分であろうとして闘っています。 
だから瞬間を生きています。
(映画『アリスのままで』よりアリスのスピーチ)

 

 

=information=
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こんにちは。
アドバンスト・スタイリストのやまだみゆきです。

 

若年性アルツハイマー症の主人公を演じた
ジュリアン・ムーアが、
世界6大映画賞の主演女優賞を総なめにする、
史上初の快挙を達成。

 

いわゆる難病ものですが、
クライマックスで感動しておしまい、
というタイプの作品ではありません。
重いけど、静かで、
でもシーンが変わるたびに病気が進行して、
問題のフェーズがどんどん複雑になっていきます。

ここまで自分ごととして考えずにはいられないのは、
監督自身が難病と闘っていたからでしょう。

 

主人公・アリスは優秀な言語学者なのですが、
病気の進行とともに“言葉”をどんどん失っていきます。

最初に忘れてしまうのが“lexicon”—。
“語彙”を意味する単語なのが、
とても象徴的です。

 

若年性アルツハイマーの特徴は、
病気の進行が早いこと。
2年ほどでほぼ記憶をなくしてしまうそうです。

言語学者が、言語を失う—。
ブランディング以前、
それはアイデンティティの崩壊を意味します。

 

 

 

もし、自分が自分でなくなってしまったら。
そのときのために、
アリスはビデオレターを残します。

みっともない姿をさらすくらいなら、
死んだほうがまし—

でも、アルツハイマーという病気の現実は
アリスの想像よりはるかに無慈悲で
厳しい現実を突きつけます。

 

 

 

「しあわせってなんだろう」

 

この質問にスラスラと答えられるひとが
どのくらいいるでしょうか。

 

答えられたとして、
10人いれば10人とも納得するような回答は、
なかなか得られないような気がします。

なぜなら、なにをしあわせと感じるかは、
そのひとの価値観によって異なるからです。

 

でも、

 

「ふしあわせってなんだろう」

 

と聞かれたら?

 

 

 

わたしは、
「あたりまえのことが、
あたりまえでなくなること」
だと答えます。

 

健康で、あたりまえ。
家族がいるのが、あたりまえ。
仕事があって、あたりまえ。
自由で、あたりまえ。
平和で、あたりまえ。
言葉が通じて、あたりまえ。
電車が動いていて、あたりまえ・・・

どんな状態を“しあわせ”と感じようと、
あたりまえのことが、
あたりまえにあることを
前提にしていないでしょうか。

 

「あたりまえであたりまえ」なことは、
なにひとつありません。

 

「ラッキー」なんです。

 

 

 

ラストシーンで、リディアが朗読するのは、
『エンジェルス・イン・アメリカ』の一節です。

80年代のアメリカ社会の矛盾を描いた
上演時間7時間におよぶ超大作。
物語の軸となっているのは
エイズによって運命を狂わされた人びとと
その家族の葛藤です。

さきごろ、米国最高裁で同性婚が承認され、
大きなニュースになりました。
問題を抱えながらも、
ゲイカップルへの理解は進んでいくでしょう。
将来、愛は性別を問わないのが
「あたりまえであたりまえ」になったとき、
『エンジェルス・イン・アメリカ』のような作品も
歴史の一部として思い出されるのかもしれません。

 

一方、アルツハイマー症は、
「癌だったらよかったのに」とアリスが言うほど、
無知ゆえの誤解や認識不足も多く、
理解が進んでいるとはいえない状態です。
現代医学では完治できないことも
絶望感を深くする一因です。

『アリスのままで』のような作品が
公開されることで、
アルツハイマー症を
自分の問題として考えることが
世のなかをすこしずつ、
変えていくのかもしれません。

 

 

この作品のクライマックスは、
認知症の介護者会議における
アリスのスピーチのシーンです。
ジュリアン・ムーアによれば、
スピーチ原稿を書いたのは、
この作品の共同監督のひとり、
リチャード・グラッツアー。

彼は重度のALS (筋萎縮性側索硬化症)と闘病中で、
撮影終盤には話すこともできなくなり、
特注のiPadを右足の親指でタップすることで
会話をしていたそうです。
そんな彼だからこそ、
アリスの代弁ができたのでしょう。

 

 

オスカーの授賞式では、ジュリアン・ムーアが
ふたりの監督のエピソードを紹介しました。

 

「リチャードがALSであるとわかったとき、
ウォッシュが彼に聞いたんです。
『何がしたい?旅行?世界中を見て回ろうか?』
彼の答えは映画を作ることでした。
だから、ウォッシュはその願いを叶えたんです」

 

YouTube Preview Image

 

「しあわせってなんだろう」

 

この大きな問いかけに
普遍的な答えを出すことは難しい。

でも、リチャード・グラッツアーの
公私ともにパートナーであった
もうひとりの共同監督、
ウォッシュ・ウェストモアランドが、
最愛のひとの晩年を
最高にしあわせにしたことは確かです。

 

では、本日もアドバンストな一日を。

 

 

参考:アカデミー受賞からわずか3週間──「アリスのままで」の監督がALSで死去

 

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miyuqui yamada

講師、講演家、コンサルタントなど人前に立つ人の外見と内面を装いでイメージアップする専門家。 34年間クリエイティブ業界において、アパレル、化粧品、流通大手企業をクライアントに、広告制作・販促・編集企画のディレクターとして、数百回のプレゼンと2500名以上の成功者の取材・寄稿に関わり、「勝つ人」「成功する人」の外見に興味を持つ。92〜95年、外資系化粧品会社にて2000名以上の女性にメイクとファッションのセミナーを実施。2014年STYLE&PLAN設立。自身のプレゼン、講師経験をもとに衣装を担当したクライアントがセミナー講師コンテスト入賞・優勝を続々と果たす。その勝率は8割。「セミナー講師、服装」の検索においてはGoogle検索1位。